第26話~新しい仲間!!~

関西代表のオフィシャルプレイヤー、天野槍一郎あまのそういちろうが桐山剣のテクニックに惹かれ、剣率いるゲームチーム『シャッフル』に入団した。


 その後、ゲームワールドから送還した剣とみのりは桐山宅にいた。


 剣は早速、槍一郎が自分のチームに入団した事を祖父の桐山矛玄むげんに報告した。


「おぉ!あの天野君が剣のチームに入ったと!!」


  「そうなんですよ!槍一郎君優しそうだし、レースゲーム凄く速かったし、とても強そうだし!!これでチームも有名になっちゃうかな~♪」


 みのりもすっかり有頂天になってはしゃいでいる。


「――その槍一郎の事なんだけど、何で俺達のチームに入ったのか分かんねぇんだ。

 ……あいつ、おじいちゃんとWGCの角田さんの事は知ってるらしいけど、おじいちゃんは何か知ってる?」


 剣はレースゲームで勝利したクリア報酬、5000円とアイテムを確認しながら矛玄に質問した。


 やはり無名のチームが急にオフィシャルプレイヤーの入団に関しては、嬉ながらも違和感があったようだ。



「うーん……天野君は昔からゲームの腕が立つ少年で、大会にも好成績を残して、主宰のWGCから良く称賛されていてな。

 2年前にオフィシャルプレイヤーに認定されてからは、あまり友達も作れなかったそうだ。

 ワシもよく天野君に剣の話をしてたんだが、剣がチームを作ってから、天野君は随分気になっていた様子だったぞ」


「―――あいつも訳ありってか…?」


 剣はますます疑問に思った。


 剣と同じように、彼も友達を作れずに孤独な日々を過ごしていた。

 同じ孤立した者同士、槍一郎もまた過去に何かあったのかも知れない。と剣は感じていた。



「……剣、ゲームにはプレイ次第で人を惹かせる魔力がある。

 昨日の剣のレースゲームで、天野君の心に何か響いたんじゃないかとワシは思うんだが…違うか?」


「それだよ!あの時の剣君のプレイを見て、槍一郎君凄く眼が輝いてた!それだけ剣君が強いのよ!!きっと」


 矛玄の会話にみのりも割って入ってきた。


「……そうか?単に物好きなだけじゃねーのか?アイツの方が強いのに、ゲームの実力試されちゃったしさ!」

 剣は少しちゃらかすように言った。


「もう!素直じゃないわねっ剣君」


「はっは!始めたばかりのチームで浮かれるよりはいいわな。せっかく出来た仲間だ、天野君とも仲良くしてあげなさい!」


(………槍一郎が何を抱えていたのか知らねぇが、今は深く探る必要は無ぇな。

 ――久々に出会えた、だからよ)


 剣はみのりと矛玄の話に耳を傾け、思いながらに手元のカフェオレを飲み干した。


「――よし!槍一郎のチーム登録もあっちで済ませたし、日が暮れるまで俺の部屋でゲームするかみのり!!」


「きゃ~い♪♪」


 二人は疾風の如くリビングから飛び出し2階に向かった。



(………『類は友を呼ぶ』というか何というか…みのりちゃんともそうだったが、この出会いは偶然ではないぞ剣。

 心の底で求めていたものが繋がりあって出来た、で出来た仲間だ。

 ――大事にしてやりなさい、これからも……)


 矛玄は一人リビングで染々と思い更けていた。



 ◇◇◇


 ―――翌日。

 天童学苑高校の放課後、剣とみのりは教室の廊下で何やら見たことがある人物を見つけた。



「―――あれ?あの人、槍一郎君じゃない?」


「え!?何で高校にアイツが…」


 二人は確めるべく近づいてみた。

 すると、彼の方も振り向き様に二人の顔を見て驚愕した。


「ん?剣にみのりちゃんじゃないか!君達同じ天童学苑の生徒だったのか!?」


 やっぱり。槍一郎が天童学苑の制服着ている。ベージュのズボンが長身の彼の脚を細く際立てている。


「それはこっちの台詞だ!同じ年で同じ高校とか、お前どこの組なんだよ?」


 キャラがキャラだけにヤ◯ザみたいな言い方……剣の食いかかりに槍一郎は平然と返した。


「僕は5組だ。しかし二人とも僕と一緒の高校とは気づかなかった…」


 剣は2組、みのりは1組であるから場所は遠きにありて、実際に会わないと存在に気付かないものだ。


「……槍一郎さ、お前ずっとぼっちでオフィシャルとかやってたんやろ?学校終わった後いつも何してんだよ」


 剣、お前も以前までぼっちだったじゃないか。みのりが出逢うまでは。


「あ、そーやった」


「普段学校終わりはゲームワールドでの防犯パトロールとか、WGC管内での仕事があるけど……今日はちょっと特別でね」


「何か用事でもあるの?」とみのり。


「まぁね……知り合いの頼み事!」


 槍一郎はそう言うと、プレイギアのマップアプリを開いて剣達に現実世界の地図を広げた。


「………これ、何処の地図だ?」


「新大阪駅周辺みたいね。ほら、駅の近くにアミューズメントパークの『ギャラクシー』もある!」


 みのりがギャラクシーを指し示す場所に指を指す。そして後から槍一郎も、その場所から北北西離れた小さな建物を指差した。


「そう、以前オープンしたギャラクシーから北北西の……『BIG WAVEビッグウェーブ』という、ゲームジムだ」


「「??」」


「――君達も行ってみるかい?」


 超次元ゲーム時代に合わせて、トレーニングジムもに進化を遂げたのが『ゲームジム』。


 しかし、剣とみのりはそのジムの実態を知る由が無い。

 如何にしてプレイヤー達の心身を鍛えていくのか、二人の好奇心が無性にも駆り立てていく。


「「――――行きたいッッ!!!!」」


 二人はゲームジムの疑問を抱えながら、槍一郎の行く『ビッグウェーブ』へ電車経由で向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る