第21話~まだ見ぬゲームに向かって!!~
5つのスペシャルストーンで、オセロの不可思議な理論を更に混沌へと変える『エクストリーム・オセロ』、いよいよクライマックスへ!!
明かされたスペシャルストーンは、『
現在剣は3つ、賽目は1つのスペシャルストーンを所持している。終盤に差し掛かった今が、残りのストーンを使って逆転する絶好のチャンス!
ここから決着までノンストップで行こうとする無謀、この小説の作者の勢いに乗せて。さぁ、派手にひっくり返せ!!
「じゃ、行くぜ! 3つ目のスペシャルストーン!!」
剣のターン、早速スペシャルストーンを繰り出す。
その色は『青』! 名付けて『ストリームストーン』!!
――ドォォォォォン!!
この青石に置かれた瞬間、上下左右の何れか一直線を挟み条件無視でひっくり返せる!
「俺が選ぶのは真下、左下の賽目さんの黒石まで白にひっくり返してやれ!」
この瞬間、バラララ~っとドミノが倒されるが如く、綺麗に黒石から白石に返していった。
「角まで取っていったか……!」
賽目は首を少し傾げながら、盤面上余り思わしくない状況に思いあぐねた。
「仕方ない、そしたら僕も……!」
何とここで賽目が最後のスペシャルストーンを出す! 色は”緑“、『スライドストーン』だ!!
緑のスペシャルストーンが盤に置かれた、その拍子!
………ズレッ。
何とスペシャルストーンを置いたマスと手前に置いたマスの位置が入れ替わり、この時点で返し処理が行われた。なんという時間差攻撃!
「この『スライドストーン』は置いたマスとの交換効果で、効率よく奥行きのあるリバースが可能になる! これで僕は盤面の内側の殆どを制圧した!!」
こんなこともあるのだろうか。
オセロの盤面の殆どが真っ黒に染まりつつあり、見ているこっちまで邪悪な気持ちに駆られていくようだ。
最後の希望は、左上の角を中心に『右』と『下』に一直線に白で覆われた剣の布陣。
石の置けるマスは、残り2つ!
剣のターン、連続でスペシャルストーンを繰り出した!
「今度は“桃色”、『リターンストーン』だ!!」
桃色のスペシャルストーンは、通常に置いた後に1個だけ好きな石をリバース出来る!
「俺はこのストーンを最後の角、左上に置いて……好きな石を1個ひっくり返すぜ」
剣は置いた後に左下、右下の横サイドに遮っていた1つの自分のストーンを指定し、リバースさせた。
(え? 剣くん、なんでそこに……?)
傍観するみのりはリバースした場所に疑問を持つが、盤面は白石が真っ直ぐなストローを右に曲げた形で綺麗に並んでいた。
「切り札に対して相当拘りがあるように思いましたが、単なる見かけ倒しだったようですね! これで終いです!!」
言って直ぐに賽目は角から右下のラストのマスを置いて、全てのオセロストーンが盤面に埋め尽くされた!!
ストロー型の白を残す以外はすべて黒! これは剣の完敗………
――――いや、ちょっとお待ちを。まだ決着を決め付けるにはまだ早い。
「何を勝ち誇った気でおんねん、賽目」
「――え?」
最後まで無言で戦いを見届けていた盤連会の伴場が、初めて厳しい顔で主張した。
「お前の眼は節穴か? 桐山の手元にある、赤いストーンは何だ!?」
「赤いストーン……はっ!!?」
この瞬間賽目は、自分の犯した致命的なミスに気づいた。
剣がリバースストーンで自分の石をわざと返したのは、左端の白石まで全てを白にひっくり返すため!
「賽目さん! 超次元ゲーム時代になってどんなにオセロが進化しても、昔から言われている攻略法は変わりませんよ! その攻略法の一つは確かに『角を出来るだけ取ること』、そしてもう一つは――――【終盤で沢山ひっくり返せ】!!」
そしてストロー状になっている白の布陣と、他全て黒で埋め尽くしたフィールド。
最大限に白に返せるマスは一ヶ所のみ!!
「………これは、参ったよ!」
賽目はお手上げと言わんばかりに潔く負けを悟った。
「置かせてもらうぜ、右下の角! ストーン強奪『スティールストーン』!!」
赤い彗星の如く、スペシャルストーンが右下の角に目掛け突っ込んでいく!!
――――ズドォォォォォォォン!!!!
スティールストーンは黒石を弾き飛ばし、白石に変化、その瞬間石が波打つように三方向の直線を描き、合計18個のストーンをあっという間にひっくり返した!!
「うわぁ、綺麗!!」
「………これもまた、芸術や!」
みのりは感動し、伴場は戦い終えたオセロの盤面を見て拍手を送った。
最後のオセロの盤面は、外側が全て白の縁で覆われ、その中で左斜めに斜線を描いている。締めに相応しいデザインだ。
そしてゲームの結果は……
・賽目:黒/30個・剣:白/34個
『桐山剣、WIN!!』
「やったぜ!!」
有言実行! 桐山剣、切り札を駆使して見事盤連会に勝利した!!
「……おっと?」
剣はズボンのポケットにしまっておいたプレイギアのバイブレーションに気付き、早速取り出して開いてみる。
『
電子音のファンファーレと共に、剣のプレイヤーステータスのレベルが上がった!!
◆――――――――――――――――――――◆
☆桐山剣/プレイヤーレベル:10→12
[プレイヤーステータス]
・アクション:159・シューティング:142
・ロールプレイ:160・タクティクス:170
・スピード:149・ブレイン:144
・ハート:147・ミュージック:136
・ラック:168
[プレイヤースキル]
・【エース・スラッシュ】
◆――――――――――――――――――――◆
『メッセージが届いております、メッセージが届いております!』
「ん?」
レベルアップに続いて、更にプレイギアからシステムメッセージを伝える着信が届いた。
◇――――――――――――――――――――◇
シューティングのステータスが140を越えたため、各エリアの新しいゲームがプレイできるようになりました!!
◇――――――――――――――――――――◇
「うぉ! やったぁ、新ゲームだ!!」
このように9つのジャンルステータスが著しく数値上げたり、様々なゲームをクリアすることによって、ゲームワールドに隠された新たなエリアやゲームを切り開き、壮大なゲーム世界を開拓していく。
これが『ゲームワールドオンライン』の醍醐味なのだ!!
◇◇◇
「――――なっとらんぞ! どのボードゲームにおいても最後まで気を抜くなと、わしゃ口を酸っぱく言うとろうが!!」
「す、すみません……」
血圧高めな伴場には少し体に毒な叱咤を、ゲームに破れた賽目にこれでもかとぶつけていった。
(剣くん、もうかれこれ5分以上説教してるわよ、あのおじいちゃん!)
(そーゆーのは黙っとこうぜ。口出したらもっと長くなるから)
おじいちゃんっ子の剣は、ご年配の暗黙のルールは心得てる様だった。
「全く……おぉ、すまんすまん! 待たせて悪かったな若いの!!」
朝礼の校長の長話に付き合う胆力もあってか、長い説教には耐性ある剣とみのりは、軽い溜息を吐いて神経の開放感に浸った。
「いやぁ久々に
(……!!)
剣は祖父の矛玄の名前を聞いた瞬間、眠っていた記憶が急に呼び起こされた。
「思い出した! もしかして爺さん、俺のおじいちゃんの古くからのゲーム仲間だった伴場じいちゃんか!?」
「え、えぇッ!?」
剣と伴場の意外な関係性にみのりも驚きを隠せなかった。
「何じゃずーっと忘れてたんか! ――まぁ無理もあらへんか、お前が5歳の時にポーカー誘った時以来やもんな」
「あぁ、おじいちゃんがゲーム仲間と晩飯の奢りを賭けて俺をダシに使われたポーカーでしょ? 嫌でも覚えてますよ!」
(剣くんのおじいちゃん、そんな事してたんだ……)
当時5歳だった剣は、祖父・矛玄と伴場を含めたゲーム仲間の晩飯を賭けたポーカーに孫を使い、剣はファイブカードで圧勝させた経験があるという。この件は剣のゲーム愛を強めたきっかけになったとか。
みのりは以前、矛玄に食事を誘ってくれたが、これを聞いて内心少し幻滅した。
「――そんな事より、勝ったんだから『良いもの』とやらを下さいよ!!」
あんなに素晴らしいゲームを制した割には、報酬にやたらとがめつい剣である。
「おぉ、そうやったな! 実はな、これはあんさんが本格的にゲームを挑む時の為にずーっと取っておいたものなんじゃ……」
伴場は桐山家での家庭崩壊のトラブル等から、剣がゲームから一線を離れた事も知っており、昔のように本気でゲームに励む時が来るのを待っていたのだ。
「これじゃ! ワシからの宝物、受け取ってくれぃ!!」
古びた宝箱のようなボックスを剣が開けてみると、
「………マジかよ!? これ【ゲーム&ウォッチ】やん!!」
「嘘!? 私初めて見た!!!」
コンパクトサイズに、色もないアナログな電子画面がレトロを際立つゲーム機達。それが箱の中に埋め尽くさんとばかりに剣達を待ち構えていた! 知る人ぞ知る伝説の電子ゲーム、ゲーム&ウォッチだ!!
★【ゲーム&ウォッチ ―GAME&WATCH―】
1980年代前半に発売された本格的ポケットゲーム機の元祖。
手のひらサイズで収まるコンパクトな電子ゲームは当時のプレイヤー達を魅了し、日本国内でも1287万、海外では3053万個売り上げた伝説のゲーム。
※余談ではあるが、ゲーム機でお馴染みのコントローラーに採用されている『十字キー』はゲーム&ウォッチから生まれた。
―G-バイブル『ゲームの歴史は温故知新』より引用―
「本当に俺達にくれるんですか――?」
今の時代でも超次元ゲーム時代でも、ゲーム&ウォッチは相当なプレミア品として重宝されている。
その事を知っていた剣も貰うのを躊躇っていた。
「遠慮せんでええ! ワシにはこーゆーもんは性に合わんし、前から剣君にあげようと思ったんや、全部二人のもんやで」
「「うわぁ……!! ありがとうございます!!!」」
剣とみのりはキラキラとした眼差しでゲーム&ウォッチの宝箱を受け取った。
「……矛玄さんから聞いとったで。ずっと友達出来んで辛い思いしとったって。だが隣にゃ可愛い嬢ちゃん連れてるようじゃ心配も杞憂に終わりそうや。――前みたいに楽しくゲームをやれそうか?」
伴場が急に優しい口調で剣に言い諭す。
「もう、大丈夫です。俺にはみのりも居ますし、目標も出来ました!
だから俺は立ち止まらずに、頂点目指しますよ!! 『マスターオブプレイヤー』になるために!!!」
「そうか……良かった! だったらワシからも、二人にアドバイスを送らんとな!!」
「「アドバイス?」」
「なにぶん世の中のゲームは種類も多く、奥深い! そして二人がこの広いゲームワールドオンラインを制するためには色んなゲームを知って、プレイする必要がある!!
最先端のゲームをやり尽くすのも結構だが、ゲーム&ウォッチやボードゲームも負けず劣らずクセの強いゲームが多い。
――とにかくゲーム戦士として、己の強さを知るためにはとことんゲームをやり尽くすのじゃ!!」
流石盤連会というボードゲームを中心としたローカル集団を束ねてるだけある。
長年ゲームを愛してきた者へ、未来を乗せてゲームに挑む若き戦士への熱いメッセージ、二人の心に確かに受け止めていった。
「さぁ、行きなさい。二人ならきっとやっていけるじゃろう。心に自分だけの『楽しい』と思う形をゲームを通じて作っていきなさい!!」
伴場が二人の後ろから両手を押し叩き、応援の意を込めた。
「「………はい! 行ってきます!!」」
「未来のゲームウォーリアー、桐山剣・河合みのりに一同、敬礼ィィィィィィッッ!!!!!」
ルーム空間からエリアへ転送する剣達を盤連会メンバー総員で敬礼し、見送った。
(………『切り札を宿す剣の魂』が再び甦ったようじゃな、剣君! 色んな仲間に出会い、色んなゲームをやりながら頑張っていきなさい。これからも――!!)
――歴史を紡いできた先代のプレイヤーへの思い。
ゲーム&ウォッチの報酬を片手に、剣達はまだ見ぬゲームの待つ未知なるエリアへ突き進む!!
それ行け! 未来のゲームウォーリアー!!
新たなゲームとの出会いが君達を待っている!!!
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