第20話~『切り札』は俺の代名詞~
超次元白黒リバーシ『エクストリーム・オセロ』!!
盤連会のキャプテン、賽の目……いや、
「そんな……既に取ってある石を無理矢理入れるなんて、そんなのあり!?」
みのりは予想外な展開に、開いた口が塞がらない。それに対し遠方のフィールドに居る賽目が声掛ける。
「これが進化したオセロだよお嬢ちゃん。この『ゲームワールドオンライン』は、そういった常識を超えたゲームが数多く存在する。
そしてそれを実力や運でゲームを越えていくのも、我々プレイヤーの使命なんだよ」
流石真っ当な青年の主張と言った所か、賽目もプレイヤーとしての身の程を弁えているようだ。
(迂闊だったぜ……通りで角に追い詰めた時にスムーズに進んでると思った。あの人俺が角を狙っていたのを知ってて、スペシャルストーンを使う為に誘導したんだ――!!)
先読みの更に、先を読んだ賽目の戦略に参っている剣。スペシャルストーンの種類を把握していなかったのが仇になったようだ。
だが右下の角を取られてもまだ角のマスは3ヶ所ある。果たして剣は相手の手を掻い潜りながら、今一度角を取ることは出来るのか。
(序盤から『スティールストーン』を使ってしまったが……もう1ヶ所の角を取ればかなりのリードを広げられる。後は相手の出方次第――!)
賽目は表情を崩さず、今の状況を分析し剣の出方を伺っている。敵ながら油断出来ない、盤連会のエースに相応しい強者だ。
◇◇◇
互いの読みあいがフィールドで展開し、心理で裏返しを繰り返すエクストリーム・オセロ。
賽目が『スティールストーン』を使った後は、両者ともスペシャルストーンを使わずに従来のオセロを繰り広げていた。奥の手は重要な盤面までに取っておく戦法か。1ヶ所の角を取られてからは、剣は2ヶ所目も取られまいと一手一手を盤の内側へ石を広げていく。
だがその抵抗も時間稼ぎにしかならない。
一方の賽目は引き続いて、もう一つの角を取ろうと進めていき、剣は内側に広げながらもそれを阻止するしか最善の術は無かった。
――そして現在置かれた石は30箇所を越えて、オセロもいよいよ佳境へと迎えた!
(これは……俺も使うしかないか――?)
剣はオセロの盤面モニターを見ながら、手元にある『スペシャルストーン』をじーっと見つめている。
幸いにも剣の懸命の防御で残り3ヶ所の角を取られずにここまで迎えられた。
だが、それもそろそろ限界が来る。
推測として石の並びから残り2手で次の角、右上のマスが取られるだろう。
そして角付近には約2ヶ所の空白。先ほどの『スティール』のように奪い取る石はあれだけだが……残り4種類のスペシャルストーン、どう使うか!?
(そうだ、一か八か試してみるか……!)
剣は何やら咄嗟のひらめき、頭の中で名案が浮かび上がったようだ。
右上の空白2ヶ所、角に隣接するマスと少しかけ離れたマス。隣接マスに剣の白石を置いた。
(あ、剣くん……そこ置いちゃ――)
盤面の状況から、次の手で賽目に角を取られる……しかし剣の目付きにミスをしたような狼狽えた反応は見られない。
その一手に、賽目は何かを悟った。
「…………成る程、考えましたね」
すると賽目は警戒するでも躊躇いもなく、2ヶ所目の角に黒石を置いた。次の瞬間――――
「掛かったッッ!!!」
剣のギラギラとした目線を浴びながら、モニターのタッチパッドに力強く人差し指を突き出す!
目標は右上、斜め隣に開いたもう一つの空白、盤面目掛け空から降ってきたのは……黄色のオセロストーン!!
黄ストーンが地面に叩きつけられた、その刹那……
ズドォォォォォォォォン!!!!
地面をも裏返すような振動、天地を揺るがす衝撃の爆発音がフィールドに木霊する。
「な、何を出したの剣くん……って、えぇ!?」
みのりは砂ぼこりで薄れた盤面を確認した途端、びっくり仰天。
「黒石に取られたはずの右上角が……白石にひっくり返ってる!!?」
いや、それだけではない。剣が打ったマスの周囲・3×3マス分が全て白く裏返されている!!
「スペシャルストーンを使いましたね、桐山さん。わざと僕に角を取らせる為に!」
賽目の予想通り、剣の繰り出したスペシャルストーンで角を打ち取ったのだ!
「そーゆー事! 黄色のスペシャルストーンは『ボムストーン』!!
このストーンを置いた周囲の3×3マス分、問答無用で俺の白石に全てひっくり返せる!!」
「でも、どのみち2つの空白のいずれを僕が置いても使うつもりだったんでしょう?」
「まぁね。あんたもわざわざ角置いてなるべく多く黒石に返す方が効率的かと思ったんでしょうが、斜め隣に空白を残したお陰で3×3マス効率良くボムストーンが使えた! 角置けば良かったかは、あんたの考え方次第ですがね!」
(凄い……剣くん。相手の出方を先の先まで、既に見据えたなんて!!)
みのりも感心の眼差しが剣へと注いでいく。
剣は以前からゲーム全般において、カードゲームといった相手の駆け引きに長けたゲームが得意だと自称していた。それはオセロも然り。相手の一手を一寸先、いやそれよりも先の未来まで予測し、見通した戦法がこのゲームを有利にさせる。
目立たず、焦らず、己のペースで出方を伺い締めで決定的な一手を撃つ。
これが剣の得意とするファイティングスタイルなのである。
しかし、これを見過ごすような賽目では無い。
彼も同じくしてスペシャルストーンを消費させつつ、黒石で盤面を制圧していく。
今度は賽目からのボムストーンが今度は左下の角に使用され、剣と同じように9マス真っ黒に3ヶ所目の角を打ち取っていった。
――残す空白は全体の20%。左上のバラバラに穴の開いた数ヶ所だ。
そして使用されていないスペシャルストーンは、賽目は残り一つ。剣はまだ三つと温存されている。
「……どうした桐山君? まだスペシャルストーンが十分残っているじゃないか。
――貴重な石を出し惜しみをしては、宝の持ち腐れじゃないのかい?」
現在盤面からは賽目の黒が若干有利な状況からか、内心勝ち誇ったような口調になる賽目だが……
「――――賽目さん、あんたは切り札をどのように使いますか?」
「切り札?」
ゲームに集中して暫く黙りこんでいた剣がボソッと賽目に呟いた。
「俺は『切り札』ってのは、ゲームの勝敗を決する為に確実にゲームを制せなアカンものや思てます。その場しのぎで出したり、相手に自慢がてらで見せびらかすような一手は、切り札とは趣旨が違うと感じるんです」
「………何が言いたいんだ?」
「俺がスペシャルストーンを出さないのは出し惜しみなんかじゃない――――賽目さんに、100%勝つための大事な切り札やから!!
俺はこの三つのスペシャルストーンで、フィニッシュを決めたる!!!」
未だ明かされない三つのスペシャルストーンが剣に逆転勝利をもたらすのか!?
――頑張れ桐山剣! 『
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