第16話~さぁ、冒険に行こう!!~

「よし、早速ゲームしに行くか、みのり!」

「えっ、もう行くの!?」


 ――目標は立海銃司たつみ じゅうじ討伐。

 ――夢は『マスターオブプレイヤー』。


 決意を固めた今、後はゲームに挑むだけ。

 桐山剣に余韻に浸る暇は無い。


「……でもやるって言ったって、ゲームワールドって無数のエリアで構成されてるんでしょ? 最初、何処に行けば良いのかしら?」

「ん、そこなんだよなぁ……先ずは何から手ぇ着けるべきか?」

「ゲームするって言っといて何も考えてないじゃない!」


 行動力がある割には考え無しの無計画、これも桐山剣の個性である。

 そこで剣は、携帯端末『プレイギア』を赤ジャンパーのポケットから取り出して、アプリを開いた。


「何調べてるの?」

 みのりがひょこっと剣の後ろから顔を覗かせている。


「何って、ゲームワールドオンラインの!」


『プレイギア』にもマップのアプリが搭載されている。現実世界の地図とゲームワールドオンラインの公表されたエリアによる2つの世界構成だ。

 ゲームワールドのマップは独特で、剣達のいる『プレイヤーバザール』を南側に、無数のエリアがハニカム構造のように構成されている。


 またマップ内のエリアとエリアの間に巨大門『ゲート』のマークが数多くあるが、これは現時点では行き来出来ない事を表している。

 その理由の一つに、プレイヤーがまだ目標のレベルに達していないこと。その他に指定されたゲームの制覇やノルマ達成等の条件を満たしていない故にゲートを張り巡らせているのだ。


 数々のゲームと数々のエリアを突破せずして、ゲームワールドオンラインの制覇は不可能。ましてや『マスターオブプレイヤー』の夢もまた遠いものとなる。


「でも剣くん、最初の割には結構行けるエリア多いじゃない? こーゆーのって最初は1つのエリアしか行けないとか、みたいな感じから始まるのがゲームらしいというか……」

「ゲームワールド行ったことない割にはゲームやり込んでる言い方やな」


 流石と言うべきか、RPGのゲームばかりやっていたみのりのゲーム脳はやたらに冴えている。

 今の状況で言うと『最初の城下町で武器防具を備えてる状態』が妥当な所か。


「そっか、みのりはまだゲームワールドの仕組みを知らなかったんだっけな。――ちょっとこれ見てみ?」


 剣がみのりに見せたのは、プレイギアのプロフィールに書かれてある『プレイヤーステータス』だ。


 ◆――――――――――――――――――◆

 ☆桐山剣/プレイヤーレベル:10

[プレイヤーステータス]

 ・アクション:153・シューティング:137

 ・ロールプレイ:151・タクティクス:160

 ・スピード:141・ブレイン:135

 ・ハート:139・ミュージック:130

 ・ラック:160

[プレイヤースキル]

 ・【エース・スラッシュ】

 ◆――――――――――――――――――◆


 ゲームの成果、クリアによってレベルアップするプレイヤーレベル。

 これによって様々なジャンルのバロメーターも著しく上がっていく。


 そして条件を満たすとそのプレイヤーのアイデンティティに沿った『プレイヤースキル』、即ち”特殊能力“を習得する事が出来る。


 剣のプレイヤースキル、【エース・スラッシュ】はカードゲーム等で好きなカードを呼び起こすことが出来るという、チートスレスレの能力を得ていた。


「そう言えば、私にも書いてあるんだったよね。プレイヤーステータス」


 みのりは剣のプレイギアを片手に、自分のプレイギアを胸ポケットから取り出してプレイヤーステータスを見比べた。


 ◆――――――――――――――――――◆

 ☆河合みのり/プレイヤーレベル:1

[プレイヤーステータス]

 ・アクション:100・シューティング:100

 ・ロールプレイ:100・タクティクス:100

 ・スピード:100・ブレイン:100

 ・ハート:100・ミュージック:100

 ・ラック:100

[プレイヤースキル]

 ・なし

 ◆――――――――――――――――――◆


 まだゲームワールドを始めたばかりなので、プレイヤースキルも無く力も平坦。初心者らしい初々しいステータスであった。


「俺も、みのりも、このゲームワールドにある無数のゲームを知って、どんどん挑んで行かないと最強の称号は手に入らない。

 ――だからこそ、俺達二人で色んなゲームをやっていこうって訳よ!!」


「……納得。それなら私も大賛成! ね、ね、早く行きましょうよ!!」


 隠しきれない高揚感、ワクワクに駆られてピョンピョン喜び跳ねるみのり。


「――じゃこうしよう! どのエリアに行きたいか、みのりが決めてくれ!!」


 そう言うと剣は、マップにてプレイヤーバザールに隣接する2つのエリアを指し示した。


 プレイヤーバザールから向かって『東』、

 無数の筐体が立ち並ぶゲームセンターが大きくなったような町。

 

 プレイヤーバザールから向かって『西』、

 テーブルで繰り広げる卓上ゲームがそのまま土地となって盛んに発展した街。


 さぁ、どっちを選ぶ!?



「じゃあ――――これにするッッ!!」


 みのりが決めたのは――――【西】!!


 プレイヤー達が駒、実大スケールで展開する卓上ゲーム都市、【テーブルトップ・シティ ―TABLETOP CITY―】だ!!



「OK! 善は急げや、早速行くぞ!!」

「あ、ちょっと! 準備とかしなくて平気なの!?」


「要らねぇよ! 好奇心と心意気だけで十分!!」


 ゲームに挑むのに剣も盾も要らない、桐山剣は居たほうが良い。二人は吸い込まれていくように『アディウルの酒場』を出て西方へ、エリアとエリアを繋げるゲームの前まで駆け込んでいった。


「――準備は良いか? 行き先は西!『テーブルトップ・シティ』へ!!」

「レッツゴー!!!」


 二人のキラキラとした目線、門の向こう側には一体何が待っているのか?

 扉を開いて、冒険の始まりを告げる合言葉はただ一つ!!



 ――――ゲート・オープンッッ!!!

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