第14話~未来を切り開く絆の誓い~
――代わって舞台は現実世界。街並み辺りは夕日の茜色に染まる中、先程までヴァーチャルスペースへと誘ったゲートも、遊戯貴族の銃司の姿も何時しか消えていた。
ゲームワールドから現実に帰還した剣とみのり。ゲームに完敗して放心状態のまま近所の公園で佇んでいた。
剣は非情な現実を見せ付けられて落胆し、ベンチに座り顔を下に向きうなだれている。
(剣くん……ゲームであんなに凹まされるの初めて見たわ、どうすれば……)
みのりもどうすれば良いか分からなかった。
一方の剣は、様々な葛藤と激戦の敗退による混乱した頭の中で、色んな事が思い浮かんでいた。
ゲームで叩きのめされ、精神と家庭を壊された両親。信じていたはずの友達に裏切られた事。そして何より……
『貴様のようなヤツが最強プレイヤーなど、
銃司に完膚無きまでに叩き潰された事が一番屈辱的だった。その時、心配そうに自分を見つめているみのりを見て、彼はふとあの言葉を思い出した。
『私、剣くんの友達なんだから!――――独りで格好つけて強がんないでよ!!』
みのりが剣に言い放った昨日の言葉が、今の剣の魂に鋭く突き刺さっていた。
(俺が近づくなと言われても、あいつは助けに来てくれていた。それなのに、俺は……!!)
もうすぐ夕陽が沈む。まるで明日が戻ってこないかのように夜の闇が背後から迫ろうとしたその時、剣の何かが変わった……!
「『友達だから』、か……!!」
みのりの言葉に剣は、心の奥底にある記憶を呼び起こした。
かつて剣にも複数の友人が居て、彼らとゲームしている時が心の底から楽しいと思う日々が彼にもあった。
だがいつからだろうか? 信頼していた友に裏切られ、更には好きだったゲームで大事なものが奪われ、剣が本気でゲームを楽しめなくなったのは……
(俺、アイツの為に何をしてやれるん? ――このまま落ちぶれて良い思いするか? しねぇよな。じゃゲームしてた時、あいつどんな顔してた? ……嬉しそうだったよな!)
剣は自分に自分を言い聞かす。そして自分との葛藤に向き合いながら、一歩前に歩みを入れた。
(……俺、もう一度ゲームを楽しみたい。今度は奴と……いや、大勢の仲間とゲームしていきたい! 俺はもう一度仲間を作って、強くなって、誰も到達していない『マスターオブプレイヤー』にもなりたい!!
―――もう一度本気でッッ!! ゲームに挑んでやるッッッ!!!)
剣はうつむいた顔を上げた。その時ちょうど夕日の日射しが剣の顔を照らしていた。
「おま、いや―――みのりッッ!!!」
「え……!?」
(剣くんが、初めて私の名前を呼んでくれた!?)
それは彼女にとって唐突な衝撃であり、彼女にとっては待ち侘びていた瞬間。今までお前呼ばわりだったみのりに対する、剣の姿勢が変わった瞬間であった。
「―――みのり、昨日は悪かった! あんな酷いこと言ったのに俺を庇ってくれて………本当にゴメン!!」
剣はみのりに向かって地につくほどに深く、大きく頭を下げた。
「そんな、気にしてないよ! それよりどうしちゃったのいきなり……?」
「俺、もう一度本気でゲームをやりたくなったんだ! 銃司とかいうヤツに負けてばかりいられない!! でも俺は独りじゃ何もできねぇ!! だからッ!!!
――――俺と、友達になってくれッッッッ!!!!!」
みのりは一瞬何を言ったのか分からなかった。しかし直ぐに剣の意図を理解した。彼女にとってもずっと待ち望んでいた事が、まさかこんな形で実るとは想像が付かなかった。
「………私、出会った時からもこれからも、剣くんの友達だよ。剣くんがそう言ってくれるのを、ずーっと待ってたよ!」
みのりは感嘆のあまりに目を潤ませ、暖かな手で剣の両手をギュッと握った。
「だから、もう独りで苦しまないで! 一緒に目指しましょ、誰にも負けない最強のプレイヤーに!! マスターオブプレイヤーになろう!!!」
「………おうッッ!!!!!」
この日、夕陽の空の小さな公園に二人の少年と少女が立ち上がった。
それが伝説に名を残すゲーム戦士【ゲームウォーリアー】桐山剣と河合みのりの、伝説を呼ぶ極限ゲームバトルの幕開けとなるのだった!!
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