第4話~電脳異世界・ゲームワールドオンラインへ!~

 

 ――ゲームセンターの喧嘩騒ぎに文句を付けた桐山剣。


 流石の不良グループの大将もいきなりの文句に驚いた故に、少し冷静さを取り戻しながらも剣に返した。


「……あー騒がせちまったか、悪い事しちまったな兄ちゃん。今俺様に楯突いた女をしょっぴこうか思うとったんや。ギャンブル連勝の俺様に向かって――」


「連勝? そんなんただのマグレやろ、大したことない……」


 (!? ちょ……また騒ぎ大きくなるって!!)


 みのり、無言のストップコール。だが剣の口は止まることを知らない。


「相当ジャックポットか何かが来て頭舞い上がったのか知らんけど、アンタの運が良いのと、本来のゲームの強さとは意味が違う。気まぐれなラッキーを実力と勘違いして自惚れてるだけなんじゃないの?」


(止めたげてー!! これ以上ボスを刺激するの止めたげてー!!!)


 下っぱ全員の無音の叫びが文章内でも伝わってくる。しかしここは不良らしく沸点の低い性格の服部、逆鱗がとうとう剣の一点に絞られた。


「貴様ァァァァァッッ!! この俺様を侮辱してんのか!!!」

 胸ぐらを掴まれた剣は動じる事なく、追撃の一言を放つ。


「……そんなら、マグレ無しのゲームで俺と勝負するか? ギャンブル好きなアンタにピッタリなヤツ」


だぁ? 何でやる気だ!?」


「トランプで【スピード】ってゲームがあるやろ。こいつなら運以外に瞬発力で勝負が付けられる。俺とお前で一対一サシで勝負して、マジで強ぇのはどっちか白黒付けてみっか?」


(スピード……? 剣くん、そんなに自信があるのかしら?)


 みのりはマイナーなゲームでの挑戦に疑問に思ったが、今はこの騒ぎを落ち着かせないと整理がつかない。とにかく全員が剣の口車に乗せていくしかなかった。


「……分かった、受けてやろうじゃねぇか。で場所と時間は?」


「時間は3時間後、場所は……【ゲームワールドオンライン】の決闘エリア『デュエルフィールド』だ!!」


(ゲームワールド? あのプロプレイヤーの集まるオンラインネットワークの……!?)


 みのりは驚いた。というのも彼女は何処かしらトレンドには乗っかれない所があるのか、ゲームワールドへ行った事が一度も無かったからである。


「良いだろう。お前が売った喧嘩だ、せいぜい逃げ出すなよ。まぁ俺様の勝ちは決まってるがなぁ!!」


 悪役らしい捨て台詞を吐き、伊火様は店を出た。些細なトラブルから、決闘申し込みにまで発展させた展開を一部始終観ていたみのりは心配で仕方がなかった。


 ◇◇◇


 ――暫くして、剣もゲーセンを後にし準備を始めようとしていた。

 しかし、剣の事が気になって付いてきた一人の美少女が一人。好奇心と興味と、大匙の不安を掲げて後を追う河合みのりちゃん。


「………別に付いてこんでもえぇやん」

「そんなわけにはいかないわ。私剣くんに助けられたし、それに行ってみたいもん。『ゲームワールドオンライン』」


「え? お前ゲームワールド行ったこと無いのか!?」

「だって、ずっと彼処のゲーセンで遊んでたから……」


 剣は呆れた顔しながら、みのりの好奇心を受け入れる事にした。


「仕方ねぇ……付いていきたきゃ勝手にしな。で、お前『プレイギア』持ってんのか?」

「ん、持ってる」


 みのりは胸ポッケから万能スマートフォン・プレイギアを取り出した。


「そのプレイギアには『ゲートコード』つーパスワードを打つデータがある。それでどっかにモノリス《一枚岩》があっから、そこに刻まれたコードが現れて、プレイギアに登録されている『プレイヤーID』とコードを打てばゲームワールドに入れるんだ」


 剣も口は悪いが、根は悪くないようだ。読者に分かるように詳しく説明してる。


「ねぇねぇ剣くん、ゲームワールドオンラインって、最大規模のVRMMO《仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム》なんでしょ? 五感神経をそっちに転送させるヘッドギアとか無いの?」


「昔そういう器具があったらしいけどな。傍から見るとアホやってるみたいだからって、かなり前にヘッドギア制を廃止されたらしい」


 そんな事言ったら、VRMMO系の殆どを否定する意見になるんですがそれは。


 今や最先端ゲーム技術は、ヘッドギア等に頼らず現実世界と電脳異世界の行き来をで飛び込む技術まで発展していった。


 その技術結晶の一つに、現実世界にはゲームワールドの入口、改札口代わりに等身大のモノリスが各地に設置され、それが先程剣が申していたゲームワールドの接続機器となっているのだ。


「ここで良いかな」


 ゲーセンから約400メートル西に離れた公園に無機質な黒いモノリス、剣とみのりはモノリスに刻まれたゲートコードをプレイギアで入力する。


「プレイヤーIDと、そしてゲートコードは『ぬめねのかゆんなおほさるゆちか』……と」


 (え、復◯の呪文? ゲートコードってそんな設定なの??)


「あ、コードの事は気にしなくてえぇで。大体てきとーだし。中には顔文字とか草書で設定してるコードもあるし」


 電脳異世界の大事なセキュリティコードに統一性は無いのでしょうか。


「よし、コード入力完了!」


 次の瞬間、透明感のあるデジタル音を奏でながら、モノリスの眼前にゲームワールドの入り口。デジタルビジョンに尊大な風紀を醸し出した門『ゲート』が現れた!!


「……じゃ行くぞ! ゲート・オープン!!」


「え、や、ふああああぁぁぁぁぁ…………!!」


 『ゲート』の扉が開いたその刹那、門から開放された空気が二人の体をデジタル粒子と化し、ゲートの中に吸い込まれていった。みのりの悲鳴すら吸い込まれていく程の吸引力、そして到着するまでの時間はわずか5秒。


 ◇◇◇


 ――――デジタル粒子から再び元の体に戻った二人の目の前には、まるで中世の時代に活気盛んになっていた市場や集会所が立ち並んでいた!!



「――――着いたぜ、全プレイヤー達の集いの場【プレイヤー・バザール】だ!!」


 夢にまで見たゲームワールド!そしてゲームの世界に入り込んだような世界観にみのりは叫ぶ。



「凄ーーーーーーーーい!!!!!!!」

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