第5話~プレイヤー・バザール~
――ゲームが世界を動かす超次元ゲーム時代を象徴する電脳異世界、『ゲームワールドオンライン』に初めて足を踏み入れた河合みのり。
彼女の目に映るもの全てが、普段テレビの奥で展開していたオープンワールド、ゲーム画面とそのままの世界が広がっていた。
そんな夢みたいな世界に興奮覚め止まないみのりはプレイギアであることに気が付く。
(ん、こんな画面あったかしら? これは……ゲームのステータス?)
みのりが見ているのは、ゲームワールドのゲームを挑む時に欠かせない成長要素を入れたシステム。【プレイヤーステータス】である!
◎――――――――――◎
☆河合みのり/プレイヤーレベル:1
[プレイヤーステータス]
・アクション:100・シューティング:100
・ロールプレイ:100・タクティクス:100
・スピード:100・ブレイン:100
・ハート:100・ミュージック:100
・ラック:100
[プレイヤースキル]
・なし
◎――――――――――◎
みのりの場合、ゲームワールドに初めて来たため、初期値としてのステータスとなる。
ここからゲームワールドで様々なゲームに挑むことで、『プレイヤーレベル』も上がり、ゲームにおける9つの要素バロメーターが強化される。
プレイヤーレベルを上げることで挑戦出来るゲームが増えたり、ゲームワールドのエリアが解放されたりと行動範囲も広がる。またゲームにクリアしたり、対戦で勝利すると『クリア報酬』が必ず貰える。
その報酬の内容は、ゲームワールドにも使えて現実世界で換金して使う事もできる賞金や、プレイヤーステータスに関わる『プレイヤースキル』という特殊な能力を得られるデータ、更には隠されたエリアの鍵など様々である。
ゲームの数だけ冒険があり、ゲームの数だけ熱い戦いがある! それがゲームワールドの醍醐味なのだ。
そしてそのゲームワールドの登竜門と言えるエリアがこの『プレイヤー・バザール』である!
ここでは全国のプレイヤー達が、最新のゲーム情報やアイテム購入、オンラインでの交流に対戦申し込みなどが行うことが出来る。
まだゲームに不馴れな者や、手強いゲームをプレイする前には必ずと言っていいほどこのプレイヤー・バザールに集まり、準備をする。正にプレイヤーの為の市場なのだ!
「ねぇ剣くん、こんなとこで何かやらなきゃいけない事があるの?」
プレイヤーの市場すら初体験のみのりは、周りをキョロキョロしながら剣に質問する。
「何をって、決まってんやろ?『スピード』をするためのトランプを買うんだよ」
「トランプ買うなら、元の世界で100均でも買えるじゃない!」
100均の名前が出るところ、みのりも一般市民である。
「あのな、相手は悪名高いチンピラだぞ! あっちが勝手にルール決めて好き放題やらせたら、絶対にこのゲームは勝てねぇ。ここはトランプでも拘ってフェアに勝負すんねん」
「確かにそうね……で、ゲームワールドのトランプって何処に売ってるの?」
「東の方にある『P-ストア』。この世界のゲームアイテムは現実でも使えるし、むしろこっちのが使いやすい」
剣達が向かって北西側に、角ばった建物の看板に掲示された『P-ストア』。ちょっと古めのおもちゃ屋のような店だ。
でも最近現実でもこういう店少なくなったから、我々としてはちょっと懐かしく感じますね。
「『対戦型スタンダードトランプ』下さい」
「はいよ! 500円ね」
この時代では現代と同様に電子マネー主流となっている。日本円なのは変わらないが、プレイギアをお財布代わりに二つの世界でお金を使える。
「これでよし。コレが無いと安心してプレイ出来ひんからな」
トランプの裏の絵柄は中世の王宮に見掛けるようなロイヤルなゴシックカラー。
しかし角度を変えてみると、光で反射するシャイン加工が施してある。とても500円とは思えない良品だ。
「『スピード』は瞬発力が要やが、このカードの手触りと山札の重なり具合でかなり勝敗に影響される。それにはサラサラな新品トランプが一番相性がええねん」
「キレイね……!」
みのりもそのトランプにうっとり。用を終えた二人はP-ストアを離れ、次の目的地へ。
◇◇◇
「剣くん、ゲームワールドの何処で『スピード』やるんだったっけ?」
「『デュエルフィールド』。酒場からそのまま転送して行ける」
【デュエルフィールド】とは、プレイヤー達が一対一のシングルやチーム戦を行う際に転送される対戦を重きに置いた決闘エリアである。
ゲームワールドのみならず現実からでも、ゲートコードとデュエルフィールド用のマッチIDを送ることで、近くからオンライン転送することが出来る。
また大会のエントリーや会場もここで行っており、年に数十回に渡りイベントを開催している。
「ここでやるゲームは演出が最先端技術を使うとるから、地味なトランプゲームでも盛り上がるんだ。一日に40万人くらい来るかな」
「40万!?」
「大した事じゃない。祭り事があるとき200万人押し寄せてた。まぁルームも足りてるから平気だけど、それだけ皆が戦いに飢えてんだろうな。あいつらも」
(戦いに飢えてる……?)
みのりは剣の言葉に一瞬考え込み、質問した。
「ねぇ剣くん、皆何の為にこの『ゲームワールド』に足を運ぶの?」
「【マスター・オブ・プレイヤー】ってのを目指したいんだろうな」
「マスター……え?」
「謂わばプレイヤーの頂点を意味する称号の事。ゲームワールドのエリアを網羅し、全てのゲームを制覇した『マスター・オブ・プレイヤー』は、宇宙をも超越する究極の報酬を手にすると言われてるんだ」
「究極の報酬!? それって何なの?」
「そいつは誰も知らない。何しろゲームワールドを網羅したプレイヤーすら一人も居ないんだ。だからこそ皆躍起になってその称号に相応しい者に成り得ろうとしてる」
「剣くんもなるつもりなの? その、マスターオブプレイヤーってのに」
その答えに剣は少し躊躇った。
「なりたい。いや……なりたかった、が今の気持ちだ」
「……?」
剣の心の内に何を隠しているのか、みのりにはまだ知らなかった。だが今は勝負に挑むのみ。
二人が向かったのは酒場内での『エリアリンク』という、この世界で別のエリアに移動するワープ転送装置だ。
「対戦ゲームは『トランプゲーム・スピード』、ルームはA-13……と! ゲート・オープン!!」
剣が情報を入力したあと、エリアリンクで発生したゲートを開いて、二人はデュエルフィールドへ転送された。
「わぁ……!!」
辺り一面はゲームのモニターで埋め尽くされる程の巨大なパネルが目の前に、テニスコートのようにモニター型、対立型、パーティー型と大きなフィールドが一同整列していた。
そして剣達のフィールドは、長方形グラウンドの前後端に盤面とカードを置くラインが刻まれたテーブル。グラウンドは、テーブルに置かれたカードを拡大表示させる為のモニターの役割を果たす。
剣には購入したトランプがあるため、シャッフル等を全部自動でするタイプではない。
だが、ここで画期的なのは2つのテーブルにカードを入れるポケットがある。
そこからカードを入れることで、スピードの捨て山札としてデジタルモニターに転送され、スムーズにフェアプレイが出来るのだ。
「俺たちは招待する側だから、あいつらがルームIDを入力すれば対戦が成立するって訳だ」
と、言ってる側から。
『プレイヤー、
プレイヤー入室のアナウンスコール。『服部』って事は……?
「………来やがったな」
服部率いる『
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