第3話~迷惑な奴ら~
「また来やがったか……」
苦々しい顔で店長は呟く。20名以上の団体客にしては柄が悪すぎるパンチパーマ、学ランやら80年代のゲーセンに群がってた不良集団が自動ドアから入ってきた。
彼らは右遠方のカウンターにいる店長とみのりには目をくれず、そのままゲーム筐体へと向かった。
「……ねぇ店長さん、あの人達何なの?」
「最近ここの地域のゲーセンやらに群がってるタチ悪い悪タレどもや。確か名前は“
(うわ、いかにも悪いことしそうな名前! 分かってて付けたのかしら?)
「いつもは夜遅くに来るんだが……みのりちゃんここは一旦帰った方が良い。トラブルに巻き込まれたら大変だ」
「え、でもまだ剣くんと話が……」
みのりが話をしたがっている
「オイ、クソ店長!!」
口が悪いですなぁ! 店長に向かってクソだなんて。怒号を飛ばすのは不良達のボスらしき男。メダルで賭けあうギャンブル筐体に対して文句があるようで。早速店長はボスの元へ駆けつけた。
「……またメダル出ませんか?」
「何をトボケてんのじゃワレ、何やねんなこの脳なし相手はチート過ぎんやろが! 俺様に勝てるように設定出来ひんのか!?」
(―――え、ゲームの文句?)
学生の制服がどでかいサイズの巨漢、ガタイの割には小さいクレームにみのりは目が点になった。
「いやお客さん、それ対戦レベルMAXになってますよ!勝てないなら少しレベルを下げれば……」
「あぁ!? 俺様に手加減したヤツをやれってのか?」
「いや、そういう事じゃ……」
「俺様はな、ここらのシマじゃトッププレイヤーで通ってんねや。トップにはトップなりの最強で俺様に勝てるヤツとやらねぇと気が済まんのじゃ!!」
ボスの怒鳴りに下っぱもギャーギャー騒いで、ゲーセン内は大騒ぎ。そんな中で遠くのブロック崩しでもミスをしたような音が聞こえた。
「無茶苦茶だわ、こんな理不尽な集団がいるなんて。確かにちょっと離れた方が良いかも……」
とみのりが店を離れようとするが、
「オイ何メンチ切ってんだ、そこのJK女!!」
(ヤバイ、目を付けられた!)
「テメーうちらのボスの『
「いや、私は…その………」
「やめねぇかA太!!」
え、『A太』? なんとモブ感満載の名前……いやいや失礼ですね。そんな部下にボスの服部が仲裁に入る。
「大人げねぇぞ。天下の『伊火様』の部下がお嬢さん相手に手ぇ出すな、じぇんとるめん精神や!」
「は、はぁ。すんません兄貴………」
「分かれば結構。そんでお嬢さん、何か俺様に意見がおありかな?」
不良でも一応分は弁えてるけど、下手な返しは出来ないとみのりは思った。
「いや、私はただ店長と話してただけで………」
―――バンッッ!!!
カウンターの机を強く叩き、みのりの会話を遮った。
「この浪速区最強プレイヤーの俺様に、弱いだの横暴だの、下らねぇ反論は無いよなぁ? 古今東西のゲームで勝ち続けた俺様が負けるなんて、ありえねぇぇぇぇぇぇぇって事をよぉ!?」
ゲームの勝ちに酔いしれ、自分を見失いかけているような狂気にみのりは怯えながらもこれだけは思った。
「………違う―――!」
「あん?」
「貴方間違ってるわ! 自分の思い通りに勝ってばかりいるゲームなんて無い! そんな自分勝手で人を困らせるようなゲームばかりして、貴方なんて一度『負け』を味わえば良いのよ!!」
伊火様の集団、店長は唖然としていた。そしてみのり自身も、頭がカーっとなって何言ってるのと思わんばかりの顔でびっくりしていた。
「―――クックックッ………!!」
服部の不気味な笑いで店内の時間が動いた。
「おぉもしれぇ……そんな減らず口叩いた女は初めて見たぜぇぇぇえぇえぇ――!!」
「ヤバイぞ、ボスキレてるよ………!」
「野郎共!! この俺様に二度と楯突かんよう存分にシゴいたれや!!!」
「え!? ちょっ、待って! 止めて!!」
みのりは伊火様の部下にリンチされそうになり、恐怖と不安で悲鳴を出した時、ブロック崩しの遠方から―――
「あのー、すいませーん」
声の張らない気の抜けた声が遠くから聞こえた。ブロック崩しを終えた桐山剣だ。
「お取り込み中申し訳ないけどさ、喧しいんやけど。店ん中でギャーギャーギャーギャー騒いで、お陰で4面目パーフェクト取れんかったやないか!!!」
(剣くん! まだブロック崩しやってたんだ……)
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