第1章【シャッフル・オールスターズ編】

第1話~始まりはゲームセンターの前で~

 

 ――――ゲームウォーリアーの読者の皆様、はじめまして!


 私はこの物語を皆様にご案内します進行役、つまり小説の語り手を担当させて頂きます完全自立型AIナビゲーター・“Mr.Gミスター・ジー”と申します! 以後お見知りおきを。


 シルクハットをヨコ長に被り、黒タキシード羽織って脚長ジェントルマンなMr.Gですが。いざ語りとなれば、携帯型釈台しゃくだいを首から肩に掛けて、張り扇の代わりにステッキ持ってカツンと調子合わせ! ……って、これじゃ明治時代の講談師みたいですね。


 とまぁこんな感じで、このゲームウォーリアーのストーリーを面白く、時に迫力満載に盛り上げていきます!



 さぁさぁ皆様お立ち会い、視線は字の方に寄せて寄せて。『極限遊戯戦記 ゲームウォーリアー』、最後までごゆっくり御一読の程を!!


 ――――参りましょう、『オープン・ザ・ゲート』!!!



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 【ゲーム超次元時代】を迎えてから約五十年の月日が過ぎた、超次元ゲーム西暦・0050年の頃。舞台は日本、関西の中核・大阪。

 大阪は日本の中でトップクラスにプレイヤーの数が多いんだとか。


 そんな大阪の中心・通天閣がトレードマークの浪速区の下町情緒溢れる住宅街。新生活の風吹く四月の朝の陽気から、女子高校生の元気な声が。


「行ってきま~す!!」

 彼女の名前は河合かわいみのり。

 ここ浪速区の私立『天童学苑高等学校』の1年生で16歳。ミディアムヘアかつ純粋無垢が特徴的な、高基準で綺麗な女子高生。


 父は幼い頃に離婚しており、今は母子家庭の肩身狭さがあるが、母があの話題のゲームワールドオンラインを管理する【ワールドゲームコーポレーション(通称・WGC)】の重役を任されている故に、生活面では何の苦難も無かった。


 しかし親の多忙な仕事が原因で、みのりは今まで“親友”を作ることが出来なかった。度重なる転勤と住居の引っ越しが彼女の人間関係を犠牲にしていったのだ。



 そして今度は、みのりが高校進学する同時に大阪府浪速区に移り住む事になった訳ですが、慣れない環境で友人作りどころではなく、家の近所にゲームセンターを見つけて、そこで時間を潰す以外やることが無かった。

 でもあの管理機関で働く親の子ですから、さぞかしゲームの方は優れているだろうと思うでしょうが……実は彼女はあまりゲームが得意じゃないんですよ。


「何か言った?」


 いえ、別に!? てか語り手の私に何を干渉してるんですか!


「横でブツブツ言ってたら誰でも気にするもん! 失礼しちゃうな!」



 ……実はこの物語、語り手と登場人物を遮る“第四の壁”が無いんですよねぇ。言い方を変えるならこの作品は【メタフィクション】って事ですな。


 ◇◇◇


 退屈な学業も終えた放課後。みのりは自ら見つけた行き付けのゲームセンターに立ち寄り、夕刻まで暇潰しタイムへ。新環境の中でも中学よりも時間の余裕が出来た為、みのりは下刻時には毎日ここでゲームの練習をしていた。


「……あ、『RUI』さんが来週FPS部門でプロデビューするんだ! ずっと実況やってたし、上手かったもんね〜!」


 みのりはスマートフォン片手に画面を見つめながらSNSのゲーム関連ニュースに感心しつつ、ゲームセンターへと足を赴く。

 それと彼女の持っているスマホは、我々の持っているものとはちょっと違うのです。


 超次元ゲーム時代では、ゲームの攻略や情報に欠かせない特別なスマートフォンが存在します。それがゲーム特化型万能スマートフォン【PLAY GEARプレイギア】である。



 勿論プレイギアからソーシャルゲームも出来るし、スマホ同様にチャットや通話、アプリ利用も出来る。しかしもっと凄いのは、端末一台で100TBも容量が大きいこと。大発展したIT技術は携帯にも大きな進化を遂げたのだ。


 しかしみのりさん、いつの時代でも歩きスマホならぬは危ないですよ。と言ってる側から―――


 ――――ドンッ!


「きゃんっ!!」


 ゲームセンターの入り口付近の歩道にて、反対側から来た男に気付かず、余所見したみのりは彼の右肩にぶつかっちゃった。


「あ……ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

 尻餅を付いたみのりの目の前で背の高い男が、しかめっ面しながら彼女を見ていた。



「……あぁ、俺は平気。お前気ぃ付けぇや、狭い歩道で歩きプレイギアは不良にメンチ切られるで。ほんじゃな」


 黒いショートウルフカットに175センチはありそうな長身、バリバリの関西弁からして大阪男子であるが、眼は死にかけている倦怠な高校生。一足先にゲームセンターに入店する彼に、みのりは一つ気になった事が。


(あの人、私と同じ天童学苑高校の制服……あんな男子居たのかしら?)


 そんな男子に気になったか、みのりもつられてゲームセンターへ入店。喧しい程に騒ぎ立てるゲームのBGMが客を出迎えて、中では無数のゲーム筐体が立ち並んでいる。


(何処にいるんだろう……?)


 最新のメダルゲームやアーケードが並ぶなかで、店内の左片隅にあるレトロアーケード筐体のコーナーにみのりは向かった。ちゃんとプレイヤーの嗜好を読み取ってる良い店だ。



(………あ、いた! ―――さっきのぶつかった男子! でも何でこんなレトロなゲームを……?)

 みのりは不思議に思った。


『パック◯ン』やら『グラディ◯ス』など、80年代のアーケードが並ぶレトロゲームコーナーに、さっきの男子がたった一人でゲームに没頭しているではないか。


 そんな彼がやっているゲームは、レトロゲームの基礎中の基礎。障害物のブロックを消しては、ラケットで跳ね返しての繰り返しラリー。【ブロック崩し】だ!!



 ▲▷▼◁◀▽▶△


 PLAY GAME No.1

【ブロック崩し―BREAK OUT―】

 ・ジャンル『ブロックゲーム』

 ・プレイヤーレベル:12

 ※プレイヤーレベルは幼児期に遊べるゲームをレベル1とする。


 ☆ルール

 縦8列×横14列のブロックを左右動くラケットとボールでスカッシュの要領で崩すゲーム。持ち玉は5球まで。全てのブロックを消すと500点のスコア。

 しかし5段目のブロックを消すと急速にボールスピードが早くなったり、打ち返すうちにラケットの幅も縮むため全消しは高難度。


 ▲▷▼◁◀▽▶△


 レトロだけどシビアな設定。さらにゲームに付きもののアイテム要素もない。ただひたすらブロックを消すだけの作業は相当な集中力を使う。


 どんなプレイをこの男子は魅せるのでしょうか――?

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