第12話 出会い系サイト

 夢に出てきた「茶色くて髪の長い女」はいつになったら来店するのだろう。俺もやはり男だから女は好きだ。20代後半から30代くらいがいいな。でも、子どもはいらないと思っている。この女の子どもなら作ってもいい、と思えたら別だが。そんな人は果たしているのだろうか。


 俺は退勤してからパソコンを開き、ネットを見た。


 帰宅途中は午後6時半を過ぎていて、既に辺りは暗く、道路も人通りは少なかった。でも、雨は降っていなく夜空に浮かぶ月は綺麗に輝いていた。


 ネットでは出会い系サイトを見た。どんな女がいるのだろうと少し期待した。でも、よく考えてみたら俺のような病気のある男を好きになる女はいるのか。そう考え出すと何だかテンションが下がって来た。でも、考え方次第では心の病を持った女が出会い系サイトにいるかもしれないと思った。なので、そのサイト内をくまなく探した。すると、見つけた。病名だけで言うと「うつ病」「統合失調症」中には、「男性恐怖症なのでそれを改善したいため優しい男性を募集」というのもあった。多分、その延長に交際を求めているのかもしれない。俺は、自分と同じ病気の「統合失調症」を患っている女を選んだ。最初に目が付いたのは、顔写真。可愛い顔をしていると思った。次に男性の希望年収が500万円というところが目に付いた。安定した職業を希望とも書いてある。この女は、早井美津紀はやいみつきという名前。三十三才。北海道在住のようで、俺と同じ。でも、北海道と言っても広いので詳しくは書かれていない。職業は、ドラッグストアのアルバイト店員で実家暮らしのようだ。性格も書いてある。落ち着いていて、自分から話し掛けるのが苦手だそうだ。


 俺はこの早川美津紀という女に決めた。


 まず、会員登録をして、有料だということがわかった。多少、お金を払うのは仕方ないだろう。そう思って名前のところをクリックした。そしてメールアドレスを記入した。チャットが始まるのだろう。少し待っているとパソコンにメールが一件来た。本文は、

「初めまして。早川美津紀といいます。今回はご指名ありがとうございます。プロフィールはサイトに書いてある通りです。よろしくお願いします。伊勢川さんはどうして私を指名してくださったのですか?」

 メールの印象ではきちんとした女だと思った。そして、俺はメールを返した。

「どうも。はじまして。伊勢川晃といいます。プロフィールは見たよ。俺はコンビニの店長をやってるんだ。安定はしてるよ。俺も心に病があるんだ。それで分かりあえるかと思ってね」

 その後のメールのやり取りは、順調だった。このまま電話番号教えてもらえたらラッキーと思った。


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