第4話 赤い夜空
2021年1月3日午前1時【神奈川県横浜市 アパート「サンライズ 」105号室】
大月が突っ伏していた炬燵の上で目を覚ますと、ソファーで西野ひかりが、台所で春日が一升瓶を抱き枕にして酔いつぶれて寝息を立てていた。
そう言えば、日本最期の夜なら宴会なんですっ!とか言って無理矢理西野ひかりが、同僚の春日を引き連れて部屋に上がり込んで酒盛りになったのだったか。
大月はぼんやりと西野の苛烈なアタックと、酒癖の悪さが露呈した春日が大月と西野に絡んだカオスな時間を思い出して頭を振った。
普段の大月なら、静かな時間を好む筈だが、昨晩は何故か人恋しくなっていた様だ。
ベランダで深い溜め息をつきながら夜空を見上げると、普段は澄んだ寒い夜空のはずが、不気味な赤いオーロラが夜空一面に拡がってゆらゆらと揺れていた。
ぼんやりした頭で赤い夜空を見上げていた大月は、悪い夢でも見ている気分になった。
しばらくベランダに寄りかかりながら、浮き世離れした幻想的な赤い夜空を眺めていると、テレビから再びJアラートのチャイムと、緊急地震速報のシグナル音が流れて来た。
部屋に入ってテレビ画面を視ると、
『【政府広報】非常事態発生につき、すべての国民に避難指示が発令されました。
全都道府県において、基準値を大幅に超える放射能が観測され続けています。 国民の皆様は、今すぐに、自宅または自治体が設置した避難所等『屋内』へ避難して、命を守る行動を取ってください。特に屋外にいる方は、今すぐに『屋内』へ避難してください!危険が迫っています!
現在、今まで経験した事の無い異常事態が我が国全域で発生しています。
直ちに、自宅または自治体が設置した避難所等『屋内』へ避難して、命を守る行動を取ってください。
やむを得ず、避難の為に外出される方は、自家用車・バイク・自転車は、交通渋滞を引き起こし避難の妨げとなる可能性が有ります。絶対に使用しないでください。
また、全国の電波状態が非常に悪く、通信が極度に不安定な為、厳しい通信制限を実施中です。不要不急の通信・通話は公衆電話を除き、止めてください。必要な情報は、お手持ちのラジオ、自治体の行政無線等からお伝えする予定です。
本日から当面の間、行政サービス拠点、公共交通機関(民間航空及び船舶は除く)を除いた全ての企業活動は休止となります。
国民および国内に滞在している海外旅行者の皆様におかれましては、ご自身の安全を第一に考え、冷静に行動して頂きたくお願い申し上げます』
この政府広報は、全てのチャンネルで日本語のみならず、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語でも流されていた。
不気味な赤いオーロラが立ち込める夜空を再び見上げた大月は、ベランダのシャッターを下ろして赤い光を遮ると、ソファーで酔いつぶれる西野の介抱を始めるのだった。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m
【このお話の登場人物】
・大月 満 = 総合商社角紅社員。
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