予兆。11
《奈々、身体は平気か?不良達に酒とか無理矢理のまされたりする可能性もあるし、お前はやめといた方が良いんじゃないか?》
「……身体はへーき。万が一俺が酒のまされそうになったら、潤が止めてくれ」
《クッ。了解。じゃ、また後でな。奈々は恵美と一緒に来いよ。どっかで合流して》
「余命の話した途端大袈裟に心配してんじゃねーよ。それだと恵美が手間だろ」
《でも》
「奈々絵、コンビニまで送ってく」
爽月さんが俺の肩を叩いて言ってくる。
「いいんですか?」
「ああ、俺のことは訪問看護の人が来てるとでも言っとけよ」
「爽月さんのことをそんなふうには言いたくないです!」
訪問看護で来る人には、仕事だからって言うのだけで来る人もいるだろうけど、爽月さんはそういうのではなくて。俺にお詫びがしたくてきてくれてるから。そんな人を訪問看護の人だなんて言いたくない。
爽月さんが目を丸くして俺を見る。どうやら相当びっくりしてるみたいだ。
「……駐車場とかじゃなくて、コンビニが数メートル先にあるとこで下ろしてくれますか? それだったら、二人に一緒に来たのがバレないと思うので」
「りょーかい」
俺の頭を撫でて爽月さんは笑う。
「潤、恵美、俺は大丈夫だから心配しなくていい。今日は調子いいんだ。着いたら連絡する」
《わかった、無理はすんなよ》
《気をつけてね、奈々!》
潤につづいて恵美が言う。
「お前らもな、恵美、潤」
俺は笑って通話を切った。
「爽月さん、ありがとうございます。ここで大丈夫です」
「おー。奈々絵、無理はすんなよー」
「できるだけそうします」
「よろしい。そんじゃ、またなー」
俺は爽月さんに礼をいって車から降りると、すぐにコンビニにいった。
「奈々!」
コンビニの駐車場を入ってすぐのとこにい恵美が声をかけてくる。
「早いな、恵美」
「さっきまで友達とすぐ近くで遊んでたの!
奈々は? 電車で来たの?」
「ああ、そう」
爽月さんのことは言えなかったので、俺はとりあえず嘘をつくことにした。
「そうなんだ。酔わなかった?」
「ああ、大丈夫」
「へー。今日は本当に調子いいんだね」
「奈々、恵美!」
潤が走って俺達のとこにくる。
「もう! 潤遅い!」
恵美がぷーっと頬をふくらませた。
「言うてそんなだろ。それより、あづは?」
ああ、良かった。話が本題に切り替わった。このままだとボロが出そうだったから、話が本題に切り替わって本当に安心した。
「あそこ!!」
恵美がコンビニの裏手の壁を指さす。
そこには確かに、横並びで座り込んで、酒を飲んだり煙草を吸ったりしている見るからに不良そうな奴がいた。人数は四人。多分歳は俺達と同じくらいだ。
全員がヤンキー座りかあぐらをかいていて、四人がいるところのすぐそばに空になった酎ハイやビールの缶が何十個も置かれていた。
他にも飲み途中で飽きたのか、中身が半分以上残っているのに道路に投げ出されていて液体があふれているビールや、一口も飲まずに捨てた酎ハイなんかもあって、その光景は見るからに異様だった。
「うわっ」
俺たちのそばを歩いていたサラリーマンは彼らを見て嫌そうに声を上げると、そそくさと去っていった。どうやら注意をするほどの度胸はないらしい。
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