予兆。6

「あづって、潤といつから一緒にいるんだ?」

「小一の時からだけど、なんで今更そんなこと聞くんだよ?」

 あづは不思議そうに首を傾げた。

「疎ましいと思っているわりには、かなり仲良いと思ったから」


「……あいつは変だから」


「……それ、あづがいうのか?」

 俺は思わずそう突っ込んでしまった。

 俺からすれば、潤よりあづの方がよっぽど変わりもんだ。


「うっせ。……俺と潤は小一からの付き合いだけど、ずっと一緒にいたわけじゃないんだ。俺が小一の時、アイツの父親まだ社長になってなくて、駆け出しのサラリーマンだったんだよ。そのせいであいつは俺と入学式で知り合ってから半年くらい経った時に転校したの。父親の転勤が理由で」

「え? じゃあなんであんなに仲良くなったんだ?」

 小学一年生ならスマフォなんて持ってないだろうし、別れてから連絡を取るのはかなり無理があるだろう。それなのに、なんであんなに仲良くなったんだ?

「中学生になってから一週間くらいした時に、あいつが放課後に俺の学校に来て、一緒に帰ろうって言ってきたんだよ」

「は? 潤はどうやってお前の学校を割り出したんだ?」


「……その時の俺、荒れててさ。中一のくせに煙草吸ったりとか、誰彼構わず学生に喧嘩売ったりとか、万引きとかをしてる同級生とつるんだりしてたんだよ。まあそれは別に仲良くしてただけで、一緒に万引きをしてたわけじゃないんだけど。髪を青に染めてからあんま日が経ってない時期で、母親はもちろんだけど、先生にも髪染めたのとか毎日のように怒られたりして、ムシャクシャしてたんだよ。……母さん、いつも家に数時間しかいないで俺のことをほったらかしにしてるくせに髪を染めた途端にめっちゃ怒ってきて、少しだったけど暴力とかも振るわれてさ。そのせいで俺は苛々して、そういうことをしてたの」


 暴力に関してはきっと少しではないんだろうなと思ったが、口に出さなかった。


「潤はお前の噂を耳にしたのか?」

「そ。潤の学校に噂好きの奴がいて、そいつが潤に『青髪の瞳が吊り上がったガラの悪い中学生とは関わらない方がいい』って話をしたらしい。髪色が派手だからか、俺が主導で悪いことをやってると思われてたんだよ。それで、まぁその噂好きの奴が、俺があづって呼ばれてることも話したらしいんだよ。それで潤は俺だと想ったらしい」

「じゃあ、潤はお前だって証拠もないのに、噂の出所を探したってことか?」

「ああ。何でも、噂好きの奴から話を聞いた時にすごい嫌な予感がして、そうしたらしい。変だよな」

「フッ。そうだな。確かに変だ」

 俺は笑いながら、あづの言葉に賛同する。

「だろ?」

 俺の笑った顔を見て、あづは楽しそうに口角を上げて笑う。

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