紗代子 焦り
唇をすぼませ、テーブルに片肘をつく。
「何ですか?」
「なんでもない。それで相手の女、その女に会ったのね。どんな女だったの」
どんな女。明奈に
思い出せは思い出すほど、あの晩の美月の顔が鮮明に蘇る。和幸を
食べかけていた料理から目線を外すと、明奈が私の返答を今か今かと待っていた。
この母は、娘の災難や
「いやよ」
明奈が目を瞬かせた。
「話したくない」
「あら、そこまで話して教えてくれないの?」
「つまらない子」と、明奈はそっぽを向いた。皿の横に置かれたフォークを手に取って、クルクルと回す。「お父さん、ね」と呟くと、料理にフォークを突き立てた。
「和幸さんと別れて、貴女に帰って来てもらいたいみたいよ」
気持ちの籠ってない口調。ストンと感情が抜け落ちた明奈が、料理を
今日、此処に呼び出された用件は、きっと、この話だ。そうすると、もう明奈と話すことは何もなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます