早坂美希 興奮
みっともない——と、紗代子は言った。
確かに佳津羽の行為は、
IHコンロにかけていたケトルが、蒸気を吐き出しながら沸いたことを知らせる。インスタントのコーヒーの粉が入ったカップに熱い湯を注ぐと、黒い液体がみるみる
「はい、コーヒー。アメリカンだけど、いいよね」
真樹が
真樹はというと、差し出したコーヒーに口をつけていた。一口飲んで、また次の二口目を飲む。表情も変えずにカップに口をつけるということは、飲めない味ではないということだ。でも、やはり一人分のコーヒーの粉を二人で分けたのがいけなかったなと思う。真樹は良しとして、私は口に合わない。
飲みかけのカップをテーブルの端によせると、
興奮する佳津羽を
納得して、ひとり
「それにしても、さっきのは驚いた。まさか渡会さん、旦那と別れたのねぇ」
真樹が、そうですねと言う様に
「どうりで最近、
真樹が、また微笑みながら
「離婚の理由もさぁ、ビックリよねぇ。あれ、女の方に子供ができたってことでしょぉ。はあ、あの旦那、結構裏で、やるこのやってたのねぇ。もう、人って分かんないわぁ」
カップを持って台所に
一口飲んでみる。味の薄いコーヒーに牛乳を
グラスを持って席に戻ると、テーブルに置いたミルクコーヒーを真樹が
「あっ、國木田さんも、こっちの方が良かった?」
「私は、どちらでも……」
「ほんと? 私、自分で作ってあれだけど、飲むのに考えちゃった。あっ、これマズイってね」
うけると思って
どっちでも
真樹は最近やたらと携帯電話で誰かとメールをしているが、いったい誰とやり取りをしているのか。私より若いし独身だし、もしかしたら男が出来たのかもしれないが、しかし真樹の生活に男の影は
ひとつ、咳払いをした。でも真樹は携帯電話から顔を上げようともしない。
ほんと、
はぁっと溜息をついて天井を見上げた。とんとんと真樹が携帯電話の画面を叩く音だけが耳に届く。
さっきの紗代子のこと、佳津羽のこと、いろいろ話したいことあるのに。これじゃあ、真樹を家に招いた
帰ってもらおうかな……。
椅子の背もたれで思いっきり
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