佐久間紗代子

和幸の唇が私の口を塞いだ。息もできないくらいのキス。


 違う、浩介は、もっと優しい。ゆっくり、楽しむためのキスをする。


 私の服のボタンを黙々と外していく和幸と違って、浩介は服を脱がせる時も、私の目を一度も逸らしたことがない。

 まるでガラス細工のように扱う、その指は繊細で、彼に触れられただけで体の奥底から痺れてしまう。そして彼は囁くのだ。


『紗代子さん、今、感じてるでしょ』と。


「あっ・・・」と、吐息が漏れた。いやらしい音が私の陰部から聞こえ始める。

 和幸の手が、体が、全て浩介と違うのに、ひとつひとつ敏感に反応してしまう。



 私が和幸を受け入れられる体になった所で、突然、和幸の動きが止まった。


 私に顔を背け、緩慢かんまんな動きで立ち上がる。


「えっ、何、どうしたの」


 ベットの上、淫らな格好の私。それを横目に和幸は寝室のドアを開けた。


「ごめん。今夜はやめよう」


 そう言って出て行ってしまった。

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