その7

「ここから先はおまえの自由だが、折角ここまで来たのだ。ひとつ面白いことを教えてやろう。この先海を渡り西へ二十一海里程行くと鬼が住んでいると言われている島がある。言われているというのは、誰もその島まで行って帰ってきたという話を聞かないからだ。波に流されたのかもしれん。もしかしたら本当に鬼がいて喰われてしまったのかもしれん。まあでも行ってみる価値はあると思うのだがどうだね。」


 一瞬その場にさあーっと風が吹いてしーんと静まり、まあ太もよく分からなくなってしまいました。誰も戻って来たものがいないと言われるとなおさらです。まあ太は老人にそっと聞いてみました。

「鬼って勇者の皆さんが400匹だか倒しているアレですか?」

「違う違う。あんな勇者が暇つぶしで倒している鬼ではない。ほんものの恐ろしい姿をした馬鹿でかい化け物だ。」老人はかぶりを振ってそう答えました。


「やめます。」と。まあ太は飲み込んだ息を吐き出そうとしましたが、ほかの3人のけものたちのらんらんと光るまなざしがまあ太の顔に突き刺さり、

「行ってみようかな。話の種に。」と引きつった笑顔でそう言うのが精一杯でした。


 まあ太達は鬼のいる島へ行くこととなりました。老人は、

「よしよしわかった。行ってこい。」とだけ言うとよいしょと立ち上がり1そうの小船のところまでまあ太達を案内しました。

 小船はちいさなものでしたが、使い込まれており幾多の荒波を越えてきたぞといわんばかりの自信に満ちた無数の傷跡がついていました。

「さあ行ってこい。」老人はそう言ってまあ太達を見送りました。

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