その1

 まあ太が南東の方角へずんずん歩いていくと、近所の不良に会いました。

まあ太は心の中で「めんどくせえなあ。」とだけ思い素通りしようとしましたが、

不良どもが「おいまあ太。ここを通るならそのブーツとベルトを置いていけ!」

と、さも自分たちがここいらの主であるかのようにわめきたてましたので、

「チッ。」とだけ舌打ちをしてベルトを外そうとしたそのときです。西の方角から

「がらりがらり。グララララアー。」

と黒いうねりが起きたかと思うと、それがカラスの大群となり不良どもを一斉につっつき始めたではありませんか。


 そのあまりのカラスの勢いに、不良どもは実はあんまりけんかの仕方も知らなかったものですから、びっくり仰天し、目から火花をちらしてローライズも膝まで下げて一目散に逃げていきました。



 突然のカラスの群れになにがなんだかポカーンとしていたまあ太ですが、我に返り、「何であ。これは。」とだけ一言いいました。

 黒いかたまりを掻き分けて、カラスの中で一番大きなカラスがまあ太の前に降りてきました。実はカラスと言ってもこれはカラス天狗でした。

「オイ。ニイサンニイサン。ええブーツはいてどこ行きなさる。」とカラス天狗が尋ねたので、まあ太は

「ヨメサン探しに行くだ。」と元気に言いました。なぜまあ太が元気に言ったかというと、それはブーツをほめられてこのカラス天狗はきっと悪いやつではないな。と思ったからでした。(単純にほめられたのがうれしかったのも70%くらいありましたが。)

「ほう。」カラス天狗が感心すると、「それなら俺が空から探してやらあ。」

と一緒に行こうとしました。


 初対面の人にそこまで言われるとさすがに困りましたので、まあ太はおっ母にもらったそば団子をひとつあげることでカラス天狗に対する心の罪悪感を消しました。

 カラス天狗は三つ目のそば団子を食べ終わると「そう美味いもんじゃねえな。」とだけ言い、竜巻を起こして上空へ舞い上がりました。


 まあ太は少しイラッとしました。

 

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