第6話

 大地を揺るがす爆音の後に、彼女は頭を抱えながら群れを行く人々達と共に崩れ落ちた教会の建物の側を逃げていた。

 夜になると毛布にくるまり、朝になると歩きだした。

 遠くに国境が見えた。家族は鉄道に沿って歩いていた。多くの人々が一列になって歩いて行った。

 アンナは立ち止まり振り返った。

 故郷の空に赤い炎が昇っているのが見えた。

 もう、帰れないだろうと思った。そう思うと涙が溢れた。そしてこれからの自分はどうするべきかと思った。

 家族は叔父のいるウィーンへ行くしか方法が無かった。僅かな路銀以外に何も無い。

 そこに人生の希望はあるのだろうかと彼女は思った。

(私の中にある希望は、花びらの色彩を合わせて多くの人に花を売って少ない金銭を稼ぐだけのもの、でもその色彩に惹かれる人が私の才能をつないでくれる希望だとしたら、私は何かを見つけたのではないだろうか。色彩をつなぎ合わせて希望を繋ぐ希望を・・)

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