第9話 終日
「我々が訪れることを察知していたのか?」
彼ら(人類肥大同盟の工作員達)の間に動揺が走る。
感情を表に出すあたり、あまり訓練が行き届いていない様だ。
「いや、さっきまで神聖同盟の連中とやりあっていてね。その直後にこの襲撃だ。逃げを打ってる彼らとも思えないし、だとしたら人類肥大連合だろうと鎌をかけただけだ。君らの仲間も殺されているしね」
「そこまで捜査が進んでいるのか」
最初に城太郎の足元を銃撃したした男が口を開いた。彼が代表して話をするらしい。
「君らもずいぶんと素早い。そもそも良く僕の事を知っていたね」
「我々は上の指示で渡すものあって来ただけだ。君の事は警察の上層部に影響を行使できる人物としか聞いていない」
「ふうん」
「出来れば落ち着いて話せる場所に移動したい。君の屋敷に入れてくれないか。この二人も介抱したい」
「断る。ここで話せ。屋敷の中に入れば不利になるのは君たちの方だぞ」
(なんせトラップが満載だ)
「……分かった。とは言っても要件は一つだ。これを受け取れ」
男は腰のポーチからプラスチック製のカードケースを取り出すと城太郎に投げて寄越した。
城太郎はそれを受け取ると開封する前にチェックを行う。毒や爆薬が仕掛けられている和ではなさそうだ。
中には紙切れが一枚入っている。そこにはどうやらGPS座標らしき数字が書かれていた。
「これは?」
「神聖同盟の、この国での拠点座標だ」
「っ!?ずいぶんと準備がいいな。僕たちが奴らを見失ったのは数時間前だ」
「君たちは監視されていたらしい。我々とは別の班だがな」
「……そうか、神聖同盟と警察組織が潰し合えば漁夫の利を得るのは君たちか。逃げられてお互いの組織が温存されるよりは情報を流して争わせた方がいいというわけだな」
「具体的な指示があったわけでは無いが、そう考えるのが普通だな」
「何故、警察に通報しなかった。その方が話が早い」
「いたずらと思われるのが関の山だろう。それに彼らと直接接触はしたくなかった。我々の組織力をアピールして信用性を出し、言うことを聞いてもらう。そのために君を狙ったのだ。君ならばこちらの事をある程度知っている。おとなしく付いてきてもらえれば手荒な事をするつもりは無かった」
「どうだかな」
「上の指示で敵対する場合は仕方がないが、それ以外は持ちつ持たれつで行こうじゃないか。君も我々に近い立場なのだろう。それくらいは想像できる」
「……」
「まあいい。要件は済んだ。我々は引き揚げさせてもらう」
「立派な誘拐未遂だ。警察に突き出すのが筋だ。僕が直々に尋問してもいい」
「さっきも言ったが我々は本当に末端なんだ。何も知らされてない。手間が増えるだけだぞ」
確かに彼らは銃器も粗悪なコピー品で身に着けた装備も整っていない。どこで手に入れたかすぐに割れそうだ。
「……行け」
「感謝する」
男たちは倒れている二人を引き摺ると林の中に消えていった。狙撃種もいつの間にかいなくなっている。
「ふぅーーーー」
城太郎は大きなため息をつくと屋敷の玄関から中に入って行った。
ひどい一日だった。
だが、まだ終わっていない。
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