ロムレスのグリーの歌


むかし 人ならぬ人のロムレスは

森をさまよい 自らの一部を探し求めた


あしと手と 右目を奪い返したロムレスは

おこりの森をぬけ 愛する人とはなれ

ひとりその 黒い城を見つけた


せまりくる はじまりからの先人を

ことごとくり伏せる

人を思いのままにし らう化け物たち

そんな魔を前にしても

ロムレスの勇は わきあがった


もっとも古い者をたおし 心の臓を取り戻す

それだけにとらわれ

ロムレスは 闇の深淵にちた


そのとき

頭の上から 柔らかな明かりがふりそそぐ

見上げると 地の底に 星空が広がる

光をすう暗い点 光をはなつ白い点

無数のまたたきがきらめく中 彼は見いだす

ひときわ大きい 白金の輝き


とうといひかりが ロムレスの瞳にうつった

やがて大地と

すべての第三の民をてらすことになる

文明の灯火ともしび



– アルバテッラの東、雪壁山脈ふもとに広がる『おこりの森』の第一の民の歌から抜粋


※始祖王ロムレスが得た称号は次の通り。

奪われた仔、狂人の息子、人ならぬ人、森に消えた者、魔の狩りびと、エルフの恋人、森をひらく人、自ら取り戻した者、蛮人の救い手、神の善意を持ち帰りし者、国をおこした人、第三の民の導き手、狼心王ろうしんおう

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