古代人について 〜デメスン回想録より〜


 そのとき私は、いつも通り未開のもりひと彷徨さまよっていた。

 狂人と呼ばれ、あなどられ、夜鳴きが響く森で自分自身を探し回っていた。


 一瞬の閃光せんこうがまたたく。

 驚いて、子どものように叫んでしまった。

 遅れて届く雷鳴に我を取り戻すが、もう先ほどの自分では無くなっている。

 稲光いなびかりが、私を生まれ変わらせた。


 新しくなった目で、彼を見出す。先史からたたずむひと。

 雷光がまたたたび、彼の姿は近く、せまり、深紅しんくの口が開く。

 絶なる叫びが、己の悲鳴と気づいた時。

 その姿は消えた。

 

 はじまりからの先人せんじんは、らうに及ばずと私をあなどったのか。



– アルバテッラ王立魔法学院所蔵

『デメスン回想録』より抜粋


※大賢者デメスンが得た称号は次の通り。

厄介者、はぐれ者、狂人、森の狂人、森の知恵者、人ならぬ人の父、ロムレスの父、森をひらく人の導き手、賢者、ロムレス王に次いで神の善意を持ち帰りし者、王立魔法学院創始者、王の導き手、裏切り者

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る