3


タクシーの中でも、さっき別れた妙なサンタの顔が頭から離れなかった。



完全に終わってしまったマサユキを吹っ切れた訳でもないのに、全くおかしな話である



また会えたら良いね、なんて言ってしまったのも、我ながらどうかしてるとしか思えない。



どれもこれも、クリスマス特有の浮ついた雰囲気のせい。


無理にでもそう納得させないと、やってられない気分だった。



窓の結露を指でこすり拭うと、すぐ先にコンビニの看板が見えた。


数時間前までの名残か、空気で膨らんだサンタクロースが寒々しい店頭にぽつんと立っている。




「運転手さん、すみません」


思わず唇が動いた。


「ちょっとコンビニに寄って、待ってて頂けませんか?」




店内に入り、真っ直ぐに缶ビールを手に取る。


それからレジの前に1つ残されていた箱入りケーキも、レジ台に載せた。



今日は色々な事がありすぎた。


だから、という訳でもないけれど。


もう少しクリスマス気分を味わっていたい。


独りそんなことを思いながら、小さく笑った。





END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る