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柴野の前に回り込む。
活気を失った駅前で、彼は俯いたまま何も言おうとしない。
「私の写真を見ただけじゃ、私の住んでる方角とか行きつけのバーとかまでは判らないはずじゃない?仲が良いとしても、調査内容を逐一同僚に報告なんてしないはず」
やはり開かない、柴野の口。
「それに『僕が一番聞きたいです』って、そんなまるで自分を責めるみたいな言い方……」
私の言葉も、途切れて続かない。
2人の吐き出す息だけが、白くシンクロしている。
長い間、本当に長い間続いた沈黙を破ったのは、柴野の方だった。
「――貴女の、言うとおりです。依頼を受けたのも、寝坊したのも、無償で徹底的に調べてご依頼主様に結果報告したのも、全部僕です」
「どうして……」
「理由は変わりません。裕美子さんに、一目惚れしてしまったからです」
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