3


「えっ……?」



柴野の虚を突かれた様な顔が、街灯に照らされた。




「うーん、寝坊に理由なんて無いんじゃないですかね……あるとするなら、僕が一番聞きたいです」



困った様に笑い、柴野は自分の髪をくしゃりと掴んだ。



ゴクリと唾を飲み込む音が私の喉から聞こえた。



タクシー乗り場までは、もうすぐ。



「あ、タクシーちょうど2台ありますね! 寒い中待たずに済みそうで良かっ――」


「違う!!」


「え?」


「嘘だよね、柴野君」



歩みを速めた黒いコートの裾を掴んで、私は彼を遮った。


街灯の下、ピクリと彼の長い影が動いた気がする。


その影を見下ろし、私は言った。



「同僚じゃない。貴方が……柴野君自身がマサユキのお母さんから依頼を受けて私を調査してたのね」

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