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振られた身で言うのも変な話ですけどね、と柴野は自嘲気味に笑い、手にした水を一気に飲み干した。


額に手を当てて顔を隠しながら、氷を噛み砕いている音だけを響かせる。



「本当にごめんなさい。柴野君はすごく素敵な人だと思う」



本心からそう言った。



「……本当ですか?」


「うん」


「では、一つお願いを聞いてくれませんか?」



真っ直ぐ私を見つめる目の真剣さに、私は思わずたじろいだ。


一体どんなお願いなのかと身構える。


身構えながらも、結局頷く。




「これからも、あのバーに来て下さい」



「誠治さんのバーに?」



思わぬお願いに、声が裏返る。



「はい。堂場さんとご一緒の時もお一人の時も行きつけにされていた様ですが、実は僕もすっかり気に入ってしまいまして」



柴野は人懐っこそうな笑顔を見せた。

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