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マサユキの事を思い出して込み上げそうになった涙を押し隠す様に低く笑ってみせた私。


そんなつまらない女を、柴野は心底不思議そうな顔で見つめてから小さく笑った。


同じ「笑う」のでも、私のそれとは違う慈愛に満ちた微笑み。



彼の方がずっと年下の筈なのに、何だか大きくてやわらかい毛布に包まれている気分になる。



「全然そんな事ないです。僕は極めて短い時間しか裕美子さんを見れていませんけど、それでも外見だけじゃなくて内面も可愛い人だと思いました」



「あんた、優しいね」



再びパルフェに取り掛かる柴野を見ながら私は言った。


優しい、とはまた少し違う気がするけど、そこはもうあまり深く考えない。考えたくない。



「そんなに純粋で優しくてさ、なのに職業が探偵だなんて凄いよ。誰も見破れないと思うな」



ごく軽い気持ちで言った。


けど眼前の探偵は、スプーンを握る手を止めて真面目な顔つきになった。

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