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「ところで、その同僚の調査対象である私を何であんたが見初めてくれたのよ」
そう水を向けると、柴野が背筋を正した。
「調査対象」とわざとらしく強調してみたが、普段からその言葉に慣れ親しんでいる彼には特に何も引っかからなかった様だ。
「困ったアイツが、僕に相談してきたんです。このままじゃ怒りの収まらない依頼主様が会社にチクってクビになっちゃうって……だから僕、頑張るしかないって言いました。出来るだけ早く、依頼主様の満足いく結果を出せば良いって」
「そんな安直なアドバイスしたの?」
「どうせ僕だって優秀じゃないですもの。でもその時偶然アイツのデスクに広がっていた資料の中から裕美子さんの写真が目に入って……」
心なしか早くなっていた話のスピードを緩め、「きゅんとしちゃいました」と柴野は小さく付け加えた。
純情じみた言葉に、私は思わず天を仰ぐ。
きゅんとしちゃいました、だって。
実際にそんな言い回しをする人、いるんだ。
普段の私だったら思わず吹き出していただろう台詞。
けれど、クリスマスのフられ女にそんな余裕はなくて。
彼以上の純情よろしく、頬が紅潮する感覚を覚えた。
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