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別にやましい事など何もしていない。
だからいつだったかも分からない「その日」に尾行をされていた所で私は一向に構わなかったのだが、やはりどうにも割り切れない。
マサユキの母の勝ち気そうな顔が、まざまざと脳裏に浮かぶ。
つけ過ぎる癖のある香水の匂いまでもが蘇ってくるようで、ズキンと頭が痛んだ。
もう30近い息子に臆面もなく「マーちゃん」などと呼び掛けては何かにつけてご機嫌をとる様な、完全なるバカ親だった。
「ウチの会社は調査日数に応じて料金を頂くシステムなのですが、アイツの寝坊を知った依頼主様が大変な怒りようで」
「その同僚、まさか本当に『寝坊したから尾行に間に合いませんでした、ごめんなさい』って報告したの?」
「らしいです」
「はぁ……可哀想なくらいに正直な人ね」
私がそう感想を漏らすと、柴野が少し傷付いた顔をした。
不器用な人間でも、きっと彼にとっては大切な同僚なのだろうと思う。
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