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「貴女って正直な方ですね」
失礼、と断りながら男は遂に私の横のスツールに腰掛けた。
立ち上がる最後のタイミングを逃したことに内心で頭を抱える。
「……そうでもない、と思う」
もし私が本当に正直だったら、今頃こんな所であんたみたいに怪しげな男と会話なんてしていないわよ。
心の中で付け足す。
「ですよね」
「…………え?」
ふと真面目な顔つきになった男。
緩い弧を描いていた唇が真一文字に結ばれ、その凛々しい表情に私は思わず生唾を飲み込んだ。
「恋人に妙な嘘をつき続けたばっかりに今夜振られてしまった、そうでしょう?」
その言葉を聞いた刹那、心臓が大きく飛び跳ねた気がした。
――「お客様……高島さん!?」
マスターの叫び声。
スタンドに置いていた右手が、なんだか冷たい。
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