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「あの……」
「こんばんは、裕美子さん」
私の狼狽と不自然な沈黙など無かったかの様に、男が笑顔で応えた。
――ユミコ。
ややあって、それが私の名前だと理解する。
それから疑問が生まれるまでに、それほど時間はかからなかった。
「どうして私の名前を……」
「あぁ、失礼しました。初対面になりますものね、高島さんとお呼びしなければ」
「そうじゃなくて」
「お隣、宜しいですか?」
どことなく人の良さそうな笑顔でも隠し切れない強引さに、目の前の人物のコミュニケーション能力を密かに疑った。
まさかあの小さなグラスのカクテル一杯で酔っているのだろうか。
だとしたら、覚悟したより面倒な事態に足を突っ込んでしまったのかもしれない。
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