第9話 学生と無自覚の格差
「ねぇ、聞いて」
窓際の席から差し込む太陽の光に照らされた彼女は元気がなかった。
「どうしたの」
そう尋ねると、ゆっくりと話し始めた。
「長い付き合いの友達がいるんだ。その子が別に嫌いじゃないのに、腹がたって、自分にも腹がたって…」
そう語る彼女は何を言わんとしたのだろうか。
それは、その後明らかになった。
さて、ここから先の話フィクションめいているかと思うだろう。
しかし、これはこの「私」という存在におきた出来事であることに変わりはない。
脚色をされようと、本質は変わらない。そのことを頭の片隅に置いていてほしい。
「大学四年間で起業しろって言われてるんだって、失敗してもいいし、何してもいいから、資金とか諸々はぜーんぶ親が出すからとりあえず企業なりしてみろ、だってさ。」
は?
この言葉が漏れてしまった。
「その子はさ、学生が企業することを当たり前のように話すし。まぁ、面倒だけど起業するけどね?みたいな雰囲気。やりたいこともやってみたいことも無いのにさ、企業ってなんだよ?何したいの?その内見つけるの?そもそもなんで、起業することを私に話すの?自慢にしか聞こえない。そんな愚痴吐かれてもしらないとしか言えないし、目的もないのに起業するってなに?
服も化粧品も親の金でアホみたいに買って、いくら使ったと思う?月で20万だよ。そんな彼女が妬ましく思えてしまうし、そんな自分が汚くて嫌になる」
彼女が吐露した思いの丈、そしてその友人について。それはあまりにも阿呆らしくも残酷ではないか。
その友人の金銭感覚が同年代の中でも飛び抜けているのは置いておこう。
まず起業とは?生憎、自分には起業については無知に等しい。そのため起業する行為について事実を元に客観的に語れることは何もない。
ただ、引っ掛かることがある。
「目的がない」ということだ。起業するにあたり目的もなく、ただ親の意向に従うだけ。
「親の意向に従う」のみをクローズアップするのならば、如何せん可哀想な人間になる。
しかしながら、その子はやるつもりはあるのだ。「目的はない」が。
目的もなく起業することが可能なのか?と問いたい。
そもそもだが、ケツ持ちは全ては両親。という時点で疑問符が浮かぶ。
大学四年間となれば、成人しているはずであろう。
総括すると、目的もなく物事をおこす。ケツ持ちは全て両親。何をしたっていい。
友は自分の境遇との無自覚の格差に打ちひしがられてしまったのかもしれない。
「私だって毎月何十万も使って、服を買いたかった。いや、違った。私は彼女が無自覚に自分が恵まれた立場だって、そう言っているように感じてしまった。だから、腹が立った。恵まれた環境にいるのに、何もしないんだ」
彼女の目は潤んでいた。
以下、持論だ。
自身の環境に気づけやしない無自覚者。これが人として恐ろしいか否かはおいておこう。
「何故」気づけないのか。という点について考えたい。重複するが、これは持論だ。如何様にもつつき様はたる。ツッコミだらけだろう。
気づけない理由としては大きく分けて、二つあると考える。
一つは、同程度の環境者としか交遊関係がない。
これは説明の必要はないだろう。
二つ目は、経験を踏まないものだ。
抽象的な表現だが、これに限る。
ここでの経験は、字のごとく経験を指す。
具体例を挙げるならば、高校での文化祭のクラスリーダーになる。部活動に勤しむ。学級委員になる。ワークショップに参加してみる。
そのような、自身で物事をこなしていく「経験」
本を読む。漫画を読む。ノンフィクションを見る。劇を見る。映画を見る。過去を学ぶ。
そのような、創作物など一種の出来事を読む、見るなどする「経験」
これらが何より大切なのではないか。「経験」を積む内に、自身の感覚が養われ自身を見据えることになると考える。
持論がすぎてしまった。
そんな無自覚格差を前に自分を持って私は生きたい。
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