5時限目「数学」~6時限目「現代文」

チャイムが鳴り、授業が始まった。

今日はあまり調子が良くない。

ただでさえよくわからない橋本先生の授業が、耳に入ってこない。

頭の中で昼休みの会話を反芻していた。

「正直、最近あまり好きじゃないんだよね、静香のこと」

(よくその後すぐ、ドラマの話ができるなあ)

(たぶん私のことも陰でなんか言っているんだろうな、何考えてるかわからない、とかいつも意見がない、とか)

(そんなに嫌なら関わらなければいいのに)

頭の中で、智花に対する色んな批判が飛び出す。

(こんなこと考える私も結局同類だな)

(違うよ)

(何が違うの、嫌な気持ちを隠して話しているんだから同じじゃないか)

(しょうがないじゃん、皆が皆、思っていることを口に出したら、関係なんてすぐに崩れてしまう)

(嫌われたくないために自分の意見を言わないなんて、卑怯者だよ)

(他人の気持ちを考えず、好き勝手なんでも言う人になんてなりたくない)

(無意識に人を傷つけたくないって、自分が傷つきたくないだけじゃないか)

(建前と建前で会話するなら最初から会話しなければいいのに)

(嫌われたい人なんていない)

(そんなこといちいち考えるのが勿体ないよ)

複数の私が会話をしだす。

こうなってしまうと、元の私には戻れない。

数学の時間、現代文の時間も脳内議論が行われて、黒板に書いてあることをそのまま写すので精一杯だった。


智花が目を掻きながら後ろを振り向き話しかけてきた。

「あー、現代文耐えられなかった、私いびきかいてなかった?」

「大丈夫だったと思う、少なくとも私には聞こえなかった」

「そっか、よかったー」

(正直それどころじゃなかったからわからないけど)

「橋本、鈴木の連続はきついよねー」

智花は隣の席の女子に話しかけている。

(私の前ではちゃんと先生、って言うのなんでなんだろう)

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