俺が犯人の事件簿・ファイル2-3
なんか警察と暴力団が勝手にいがみ合って勝手に協力した。
別にいいけどさあ・・・
俺はちょっと拗ねていた。
でもおかげで事件は進み始める。
本当は俺が自首した時点で終わってるはずなのだが。
遺体検分が終わり報告が上がってくる。
「被害者の遺体は火事で焼け焦げていましたが・・・どうやら死亡理由は火事による火傷だけではないようです。被害者の胸に刺し傷がありました」
しれっとヤスとともに混ざって報告を聞いていた俺は驚く。
なぜなら俺は焼死させはしたが、胸に刺し傷は作っていなかったからだ。
「どう思う?」
報告を聞いていた正志が俺に聞いてくる。
「どう思うって部外者の俺に聞くのか?」
「いや、だってさ。お前あれだろ?」
「あれってなんだよ?」
「勉強できないくせに事件の推理は出来る名探偵」
「金○一じゃねえよ!」
「でも前回の義兄殺人事件で殺害方法推理して解いてみせただろ?」
「だからあれ俺が犯人だから!」
「あ~もうわかったから。で?どうよ?」
どうよ?って言われてもなあ。今回も俺が犯人だし。とりあえず若頭の殺害方法について語ってみせるか。
俺は若頭を殺したときのことを思い出しながら話し始める。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――八時間前
火事で廃墟となる前の暴力団事務所を俺は訪れていた。
仲が悪いくせに利益計算で悪事だけは協力して働く義兄と若頭は互いに嫌いあいながらも協力し合う悪友だった。そのうちの片方が死んだらもう片方はどうするか?簡単だ。いままで分けていたそいつの領分に手を出す。若頭は義兄のシンジケートと財産を欲していた。
「よう。災難だったな」
みえみえの社交辞令。若頭の笑顔は義兄を思い出す醜いものだった。大会社の社長とかが座ってそうなやたらと豪勢な事務机。質のいい豪華な椅子に背を預けている姿は似たもの同士の義兄とそっくり。同じく自己誇示欲が強かった義兄が使用していたものとは色違いの高級品を使用している。互いにいいものを探しあった結果同じものの色違いに落ち着くとか。相変わらずこいつら本当に仲が悪かったのが疑わしい。同属嫌悪だったんだと思う。
こいつも人の怨み買うようなことばかりしている極悪人なくせして小心者で、暴力団の集まりの会組織上位にいる暴力団から睨まれて事務所に引きこもっているというひょうきんなやつだった。そして同じように引きこもる義兄の勧めで死んだ姉特性の睡眠薬の中毒者でもあった。
「あいつの葬式に出てやれなくて悪かったな」
口にする台詞といい二週間前の義兄を殺したときのことが思い出される。思わずちょっと目頭を押さえて揉んでしまった。
「なんだ?疲れてそうだな。まあ命も狙われてたみたいだし無理もねえか」
疲れてそうだな?ふざけんな。と思わず口に出そうになるのを堪える。優しい言葉を吐いちゃあいるがそうやって俺を懐柔しようとしているのがみえみえだった。うまく俺を懐柔できれば義兄のシンジケートが手にはいるだけでなく、新しい分野の開拓およびその資金を義兄の財産から起こすことが出来る。なによりも義兄の唯一の手ごまとして働いてきた俺の能力はこの先の事業展開のために金よりもどうしても欲しいものだった。
「で?ここにきたってことは腹は決まったってことでいいのか?」
義兄が死んでから若頭は自分の下に来ないかと熱烈なラブコールを俺に送っていた。
「お前もあいつが死んでから一人じゃ大変だろう?うちは人数もいるしいいぞ。お前が望むなら俺の後釜にだってそえてやる」
近いうちに組長になるから若頭の地位を与えてやると暗に言ってくる。確かにこの組にはヤスもいるし、一緒に仕事することもあったので顔見知りも多い。だが義兄と似たもの同士の若頭の元で働くのだけは嫌だった。
なによりも一週間前に一度義兄の財産を狙って俺の命を外注の殺し屋で狙ってきたのを俺は知っている。ヤスのおかげで一回逃げ切ったころに頭が冷えたのか、すぐに俺の利用価値に気づいて殺し屋を引っ込めただけでなく、他のやつが放った殺し屋も抑えてくれたのでおかげで事なきを得たがあのまま続いていたら死んでいた。
たぶんこのまま断り続けたらいずれまた殺し屋を差し向けられるだろう。
だから確かに俺の腹はすでに決まっていた。
一人殺したあとなら二人殺すのも一緒だった。
ヤスたちのためにもお前を殺す。
殺害方法は簡単だった。
姉が死んで義兄も死んで姉特性の睡眠薬が切れ始めた頃合を狙って、俺は義兄にも盛った特性の睡眠薬を補給と称して持って来ていた。
傘下に加わるかは待って欲しいと言い。睡眠薬を差し出す。
切れかけていた睡眠薬に若頭は案の定喜び。
すぐ飲むように瓶の上から補給して入れると今回は俺が作ったことを言ってちょっと試しに飲んでもらうように言った。
義兄に逆らいもせず従順だったせいもあって警戒も無い。若頭は疑いもせずに睡眠薬を飲む。訪れ始めた眠気にいい腕だと言い。無防備にも少しだけ寝るとそのままいすに持たれ掛けたままちょっとだけ目を閉じるつもりだったのに薬に負けて眠ってしまった。
俺は椅子に若頭を縛る。便利なアウトドア用品から選んだ固形着火剤で机の周りを囲い。一個ずつ火をつけた。十一分間燃え続けて水をかけても消えない噂の着火剤は灯油やガソリンとは違って置きかた次第で痕跡が残り難くて便利だった。
若頭の部屋の鍵は若頭とヤスしか持っていない。ヤスにアリバイがあって、鍵が若頭と共に発見されれば密室殺人になる。かねてより義兄の知恵でヤスの持つ鍵の型を取っていた俺は混ぜ物の水を凍らせて作った氷の鍵を隠し持って来ていた。そいつで鍵を閉めると鍵を割って洗面所に流して処分する。ヤスは若頭の大好きなアイスの補給でこの時間買い物に行っている。ヤスが犯人だと疑われることも無い。何よりも秘密の話をするのだからと若頭には二階の人払いをしていた。一階は鍵付きの裏口から入ったから誰にも見られていない。
やばいものも置いてあるからと消防や警察が駆けつけるまでの時間稼ぎにと警報装置を切っていたのがあだになり、二階で火が燃え広がることに一階の連中は気づかない。俺は燃えやすいものが置いてある他の場所にも火をつけて裏口から脱出。タイミングを見計らって正面玄関から入って一階の連中に二階が火事であることを伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます