第24話 ミサンガ

 紬は次の日、起きて朝食を取ったらすぐにミサンガ作りを始めた。


 今度は瞳と髪の色と同じ色にしようとランスには紫色と黒色の刺繍糸で。ロッドには青と黄色の刺繍糸で怪我をしませんようにと念じながら作った。


 最後に自分用に好きな色のピンクと白の刺繍糸でミサンガを作り左手首につけた。


「これ、自分にも効くのかな?」


 自分で作った物が攻撃を防ぐというのも実感が湧かなかったが守ってくれると信じて身につける。


「ランスー!ロッドー!できたよ~!」


 旅に出掛ける準備をしていた2人。


「もうできたのか!?早いな」


「わ~い♪これで強い魔物にい……ってのはもちろん冗談で、心強いなぁって言いたかったんだ!」


 いつもの調子で魔物対峙に挑もうというセリフをランスの鋭い視線に負けて飲み込む。


 ランスとロッドの手首に守ってくれますようにともう一度願いながらミサンガを結び着けた。


「ありがとうな」


「ううん。本当に守ってくれるかわからないから危ない時はちゃんと逃げてね」


「鑑定魔法で見たら防御の付与がされていたよ。効果は確かだね。こんなに手軽に装着できるのに防御効果が高いなんてすごいなぁ~。まぁ、今度はちゃんと力量を見て挑むよ。ありがとう!」


「本当に懲りてねぇなぁ」


 またロッドはランスに叩かれていた。





「次はどこに行くの?」


「そうだな〜。どこにするかな。一度、王都に戻るか?どこか行きたい所はあるか?」


 宿を出て歩きながら行き先を検討する。


「どんな所があるかわからないから何とも言えないなぁ。……特に目的はない旅なんだね。気ままでいいね」


 のんびり自由な旅なんて日本ではやりたくてもできなかったかもしれない。毎日、家と学校の往復。時間があれば趣味の手芸で何かと作っていたから旅に出るなんて考えすら出なかっただろう。


「何を言ってるんだい。目的は魔物対峙に決まってるじゃないか。僕はまだ魔物対峙したりないよ!」


 先程の反省はどこに行ったのか開き直っているロッド。


「目的が魔物対峙なわけないだろ。しばらく魔物対峙から離れろって」


 ロッドはまたランスに叩かれる。ロッドは懲りずにイーとして見せた。


「お断りだね。僕から魔物対峙を取ったらやる気がゼロの抜け殻になってしまうだろ。その場合、歩かない僕をランスが連れて帰ってくれるっていうのかい?」


「やる気ゼロでも歩くくらいできるだろ」


「やる気ゼロだと僕は歩く事だってできなくなるんだよ」


 あまりの言い草に呆れるランス。ロッドは気にせず先を行くと昨日見た銅像が3人の目に入ってきた。


「あ、リリエリー様の銅像だ」


 ロッドは銅像の人の名前を知っていたようだ。やはり博識だなぁと感心する。


「……あぁ!ツムギを見た時に誰かに似てるなと思ったらリリエリー様にソックリじゃないか!」


 昨日のランスと同様、銅像と紬を交互に見るロッド。


「そう?やっぱり似てるかな?私には若い頃のおばあちゃんに似てると思うんだけど」


「ツムギのおばあちゃん……名前は?なんていうの?」


「リエだよ。織重リエ。いつも優しくて器用で服やぬいぐるみとか、たくさん作ってもらったよ。最近会ってなかったけど元気にしてるかな〜?」


「リリエリー…、リエ…似てるけど世界が違うからやっぱり別人かな?」


「その、リリエリー様は生きてるの?」


「さぁ?70年前くらいに仲間と魔王を倒した英雄の一人みたいだけど60年前くらいから消息不明でどこかで静かに暮らしてるんじゃないかと言われてる。……そうだ。織物の生産されてる村、リュート村が出身で、織物は全国にそこからしか流通してないから大きな町に行けばリュート村への移動魔法陣が繋がってるはず。行ってみる?」


「おばあちゃんと関係あるかわからないけどこの世界の織物は見てみたいかも!」


 手芸好きの血が疼いてくる。


「じゃあ、次はリュート村に行く為に大きな町……ここからだとどこ?」


 ロッドは地理をよく把握しているランスを仰ぎ見る。ランスは頭の中で地図を思い出し答えた。


「エスト…だな」


「じゃあ、次の目的はエスト!エストに出発…!!」


 次の目的地が決まり、村人に感謝されながら、子供達には惜しまれながら3人はノクト村を後にした。


 


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