第23話 反省会
宿に戻ると案の定、寝て少し元気が戻ったロッドがお腹を空かせて待っていた。
すぐにもらった物をテーブルに広げ夕飯にする。
「パンに果物に串焼きにお菓子。干し肉もある!たくさんもらったね〜」
テーブルの上に乗せた食事に目を輝かせ次々と頬張っていくロッド。
「ツムギと俺の分も取っておけよ」
「わかってるよ。たくさんあるから大丈夫だろ?魔力切れを起こしたらお腹も空くんだよ」
勢い良く食べていくロッドを牽制しつつ、ランスも負けじと食べていく。いつもどおり賑やかな食卓が始まる。
「さて、ドラゴン退治の事だけど…2人がいてくれて本当に助かったよ。ありがとう。後もう少し魔力が残ってれば僕一人で何とかできたと思うんだよね〜」
パンを頬張りながらロッドはドラゴンとの戦闘を振り返る。
「まだ懲りてないのか?ツムギがすぐ治してくれたから良かったものの」
「強い相手との戦いはやっぱり楽しかったね〜」
ロッドは重症だったにも関わらず魔物対峙は楽しいという概念は変わらない。
「お前な…聞いてるのか?しばらく魔物退治は禁止だからな!」
規制するランスに文句を言うロッド。しばらく言い合いをしていたが、言い返すのに疲れて話を戻すロッド。
「ツムギも面白い攻撃方法だったね」
「うん。前いた世界で体の表面は強くて敵わなくても内面は弱いって鬼やドラゴンの話があったなって思い出したから、それに掛けてみたんだよ」
あれは本当に掛けだったが、思惑通り内面が弱点で良かった。
「お前なぁ、それで当たってたから良かったものの、違ったらツムギも大怪我じゃ済まなかったかもしれないんだぞ。いいか?あんな時があったら次はすぐ逃げろ。わかったな?」
「はぁい…」
ランスの小言がこちらに飛び火してきたと思ったが紬を思って言ってくれてる事を知ってるので素直に受け入れる。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ」
「俺はお前に一番怒ってるんだ!」
憤慨するランスに同情しながらも不思議だった事を質問する。
「ドラゴンの攻撃、二人共受けてたよね?ランスはどうして大丈夫だったの?」
「そういえば、どうして僕だけ傷を負ってたんだろう?」
ロッドも理由を知らないらしく2人でランスを見つめる。
「それなんだがな…ツムギに謝らないといけない事が…」
ランスがバツの悪そうな顔をして紬の前に真っ黒焦げになった20センチくらいの紐を出した。
「……何これ?」
「えっと…ミサンガ?と言ったか?ツムギが俺にくれたやつだ。ドラゴンから攻撃を受けてもうダメだと思ったら、これが光って攻撃を防いでくれたんだ。その後すぐ焦げてしまったけどこれのおかげで俺は助かったと思う」
紬の目の前にあるミサンガだった物は形を保ってるだけでもすごいと思うような炭の塊だった。
「すごい…役に立ったんだ…。良かった…」
「何それ!僕はもらってない。ズルいよランスばっかり!」
「おまえが魔物退治にばかり、かまけてるからいけないんだろ」
「それでもズルい!あんな強い攻撃を防いでくれるなんてスゴいじゃないか!」
自分はもらってない魔法道具らしきの物が気になりすぎてランスに八つ当たりすると紬が勢い良く立ち上がった。
「作る!今度は二人に!まさかミサンガにこんな能力があるなんて知らなかった!怪我するのなんて見たくないからすぐ作る!」
食事もそこそこに作りに行こうとする紬をランスが止める。
「まぁ、食べ終わってからでいい。何なら明日でも大丈夫だ」
「僕も作ってもらえるならいつでもいい」
そう言う二人に少し昂ぶった気持ちが治まる紬。ストンと椅子に腰掛ける。
「だって二人共死んじゃうんじゃないかって、すごく心配だったんだからね」
だいぶ時間が経ってるがドラゴンと対峙した時の気持ちが思い出されて涙が出てくる。
ドラゴンが恐かったのはもちろん、大怪我で動けない体に焼きただれた皮膚を思い出しただけでゾッとする。
「……心配かけて…ごめん。もう少し考えてから動く事にするよ。……たぶん」
ロッドが情けない表明をしてパコンとランスに叩かれる。
「そこは、しっかり反省しろ!」
今度はいつもの賑やかさにホッとしてまた涙が出てきた。
ランスがゴツい大きな手で涙を拭いてくれる。ロッドが申し訳なさそうにハンカチを渡してくれる。嬉しくてなかなか涙は止まらなかった。
みんな無事で本当に良かったと思える楽しい夜は更けていった。
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