第15話 エルフの村
リゼルにエルフの村へ案内される。
木造で作られた家や大木に備え付けられたような自然に近い家が森の奥まで続いていた。
村にいるエルフは誰も皆、眉目秀麗な顔立ちだが、遠くから紬達を見てるだけで近づいては来ない。
少し居心地の悪い思いをしながらもリゼルの後についていく。
案内された先は皆が集まって会議が出来るような広い部屋がある建物だった。
そこでご馳走を振る舞われながら何人ものエルフに囲まれてるのがロッドだった。
ロッドはつまらなさそうな面倒そうな顔をしていたが、紬とランスを目にするとパァッと顔を輝かせた。
「ランス!紬!迎えに来てくれたんだね!長老達、残念だが友人が迎えにきてくれた。これにてお暇させてもらおう」
ここぞとばかりにエルフの輪から抜け出し紬とランスの元へ逃げてくる。
「ロッド殿!待ってくだされ!フライヤとの結婚を考えてくだされ!」
逃げるロッドになおも言い募る。
「あ〜結婚は……このツムギとする事になってるんだ。ツムギは僕が心配でこんな森の中まで探しに来てくれたんだ。こんな健気な婚約者に免じて僕を諦めてくれないかな?」
この場を抜け出す為の嘘とわかってるが紬は開いた口が塞がらない。
「こんなまだ年端も行かぬ小娘ではないか!嘘を申すな!」
「いやいや、こう見えてもツムギは……14歳?来年の成人の儀を迎えたらすぐ結婚しようと約束してたんだ!」
どうにか逃げたいが長老達も引かない。
しかしここで紬が口を挟んだ。
「待って!私、17歳!15歳で成人なら立派な大人です!」
「え?えええぇぇぇ!?嘘でしょ。まだ10歳くらいかと…え?僕と一つしか違わないの!?」
隣にいるロッドが一番驚いているがランスも一緒にとても驚いている。
本当に幼く見られてたんだと呆れる。
「ロッド殿、相手の年齢も知らぬのに結婚相手とは冗談が過ぎますぞ」
「……はい」
ロッドも観念したように長老達に向き直り再び席についた。
「我々は魔力の高いお主を受け入れたい。フライヤとの結婚を考えてほしい」
「いや、僕なんかが…」
「何を言う!あの誰もが困っていたバシリスクをあぁも容易く退治してくださった。謙遜なさるな。フライヤが気に食わぬのか?エルフの村の一番の美人だ。器量もいい」
長老の後ろに静かに控えてるのがロッドの結婚相手にと勧めているフライヤだろう。
腰まで伸びた金髪に緑色の瞳でお淑やかな感じがするとても綺麗な女性だった。
「あんな綺麗な人、断ったらもったいないんじゃない?」
つい本音がポロッと出てしまう。
「あんな美人だと僕のカッコよさが目立たないじゃないか!」
「断る理由それ!?内面を見てない時点で人間として最低だからね!エルフのお姉さんもこんな奴と結婚させられていいの!?」
フライヤは黙って俯き何も言わない。
「結婚して共に住むようになればお互いの良い所も見えてくるだろう。先に祝言をあげ…」
「待ってくれ!」
その場にまた新しい人物が現れた。年代は同じくらいだろうか。肩より長めの金髪に濃い緑色の瞳をした背の高い男性のエルフが話に割り込んできた。
「フライヤとは俺が結婚の約束をしている!血族強化の為にフライヤを利用しないでくれ!」
「ダスティ。邪魔をするな。お主は婚約の花を見つけてこれなかっただろう!それがなければ結婚は親族の決めた相手とすると掟で決まっているだろう!?」
「…っ、その花は魔物に荒らされて何も残ってなく何年も咲かない!そんな馬鹿げた掟で俺達の愛が裂かれてなるものか!フライヤ!俺と一緒に…」
「…っ、ダスティ…っ!」
フライヤがダスティの元へ行こうとして長老達が止めて近付く事すら許されない。
「婚約の花が見つからないという事はそういう運命という事だ。諦めろ!」
「嫌だ!俺はフライヤを諦めない!」
なおもフライヤに近づこうとするダスティはエルフの数人に阻まれ外に連れ出されてしまった。
フライヤはそんなダスティを見て何も出来ず泣き崩れていた。
どう見ても想い合っている2人なのに結ばれないのはおかしい。その婚約の花とはそんなに大切な物なのだろうか?
事情もあまりわからないが想い合っている2人が結び付くのが一番いいに決まっている。
その場は話が進まず、しばらくの間でいいからエルフの村に滞在してほしいと頼まれ、無下に断る事も出来ずに紬とランスとロッドの3人は村に留まる事になった。
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