第14話 ロッドの行方

 一晩経ってもロッドは戻ってこなかったので探しに行く事にした。


 泉の精霊に別れを告げ、森に戻る。


「どこまで行ったんだろうね?」


「さぁな。魔物がいればどこまでも行く奴だからなぁ。あいつからは俺達の場所がわかるから放っておいてもいいんだが、何をやらかしてるかわからないから一応探しに行かないとな…」


 付き合いの長いランスは呆れながら呟く。


 歩いていると森の奥から飛んできたピクシーが紬の裾を引っ張ってきた。昨日ネックレスを作ってあげたうちの1人だ。


「どうしたの?ロッドがどこにいるか知ってるの?」


 連れていきたい所があるようだ。ランスと顔を見合わせ、とりあえずピクシーに付いていってみる事にした。


 聖なる泉から遠ざかり森の中で魔物がいるはずなのにどこまで行っても現れない。魔物がいた形跡が残ってるのでロッドが倒したのかもしれない。


 ピクシーに案内されどんどん森の中を進んで行く。


「ねぇ、ランス。迷って森から出れなくなるなんて事ある?」


 森は広くどこまで行っても風景が変わらないので紬が一人グルグル同じ場所を歩き回っていたとしても気付かない自信がある。


「マッピングの魔法をツムギは知らないのか?あぁ、前いた世界は魔法がなかったんだったな。人を特定して場所がわかるのは魔法が得意な奴だけだが、マッピングの魔法は俺でも使えて、通った所が魔法の地図に自動でマッピングされるから帰るのは大丈夫だぞ」


「そうなんだ!良かった。帰れなくなったらどうしようって思ったよ。ランスとはぐれないようにしないといけないね」


「マッピングの魔法も知らないで冒険者になるのは命知らずだな」


「私は冒険者じゃないでーす」


「ははっ、そういやそうだったな……って!ツムギ!危ない!!」


「え?…わぁあああああ!!!」


 突然、世界がひっくり返った。体が宙に浮いたと思ったら罠の網の中だった。


 紬は罠を踏んだらしく一人網に囚われた。

大きな木に網で吊るされている状態である。

 ジタバタするが抜け出せない。


 少し離れてピクシーが可笑しそうに笑っている。


「罠にかける為に呼んだの?も〜!」


「ツムギ、大丈夫か?今降ろしてやるからな!」


 ランスが剣を抜いて網を切る。


「ちょっ、待って、落ちちゃ…っ」


 ドサッ


 地面に落ちる衝撃を覚悟したがランスが難なく受け止めてくれる。


「落とすわけないだろ。ピクシーには気をつけろって言われてたのにな」


 罠に嵌った紬にイジわるく笑う。


「でも…罠に掛ける為だけに呼ばれたわけじゃなかったみたいだな」


「え?」


 地面に降ろしてもらいランスが見ている先を見ると遠くに集落が見えた。


「ロッドはあそこにいるのかな?」


「可能性はあるな。行ってみるか……っ、誰だ!?」


 森の茂みに向かってランスが剣の柄に手を添えながら叫ぶ。


 ガサガサと音を立て茂みから出てきたのは同年代くらいの金髪に緑色の瞳をした男の子だった。しかも耳の先が尖って長い。


(もしかして、エルフ!?)


 しかしこちらに弓を構えている。狙われていたのかと思うとゾッとする。

 紬が罠に掛かったので様子を見に来たようだ。


「あんた達こそなんだ?エルフの村に何の用だ?」


「俺達は人を探していただけだ。あそこがエルフの村とも知らなかった。村に人間の魔導士が一人迷い込んでないか?」


「あんた達、あいつの仲間なのか?」


 正直に来た理由を話すとエルフは構えていた弓を下ろした。


「俺達が探してるのはロッドという名の男だ。ロッドはエルフの村にいるのか?」


「あぁ、ここらで困っていた大型の魔物、バシリスクを倒してくれて長老達がもてなしている。…ただ…」


 エルフはその先を濁した。


「ロッドのバカが何か迷惑をかけてるんじゃないか?すぐ連れて戻るから」


 ロッドは礼儀作法は出来ないことはないが魔物退治にしか興味がないので敢えてしない事もある。何かエルフ達の迷惑になったのだろうと予測して先にランスが謝った。


「いや、どちらかというとこっちが迷惑かけてるかもしれない…」


 エルフが申し訳なさそうにエルフの村に入る前に今の現状を説明してくれた。


「俺の名前はリゼル。見てわかる通りエルフだ。エルフの村はここ最近現れた凶暴な魔物に困っていた。

 それを突如やってきたロッドがあっという間に倒してくれた」


 その魔物に困っていた村のエルフ達は喜びロッドを歓迎しご馳走を振る舞い寝床を提供してくれ昨夜はエルフの村に寝泊まりさせてもらったようだ。

 今朝ロッドが村から旅立とうとすると長老達が止めてエルフの娘と結婚しないかと突然、話を持ち掛けたらしい。


「結婚!?急な話だな。エルフは美女が多いと聞くが、ロッドは色恋にあまり興味がないから反応も薄かったんじゃないか?」


「そうなんだ。すぐ断られたが魔力の高い者を部族に取り入れようと長老達が必死になっている…。あんた達が迎えに来たと聞いたら諦めてくれるかもしれない」


 リゼルの縋るような目に紬とランスは顔を見合わせ村に行くことを決意した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る