第11話 泉の精霊
森の奥、木々に囲まれ一部開かれた場所に聖なる泉と呼ばれる泉があった。
日が差し込み名の通り神聖な泉に見える。
小鳥や小動物も水飲みに来ている。
泉を覗き込むとそこにないのではないかと思える程、透明で透き通った綺麗な水だった。
「綺麗だね。ユニコーンはいないね。残念…え?…わぁぁぁ!!!」
泉を覗き込んでいると泉の中から半分透き通った全体的に白いおじいさんが出てきた。
1メートル程の大きさで長い白髪に顎髭も真っ白で長い。
「泉の精霊だよ。呼び出してもないのに出てきてくれるなんてツイてるね」
「ピクシーがたくさんついてきたのが珍しかったんじゃないか?」
突然の登場にドキドキしながらも紬は泉の精霊と目が合いペコリと挨拶のつもりで頭を下げる。
泉の精霊は目を細めて優しく微笑み、紬に向かって手を伸ばした。
紬の全身が仄かに光りすぐおさまる。
「え?何?」
「良かったね!魔法を授けてくれたよ!」
「え?そうなの?」
自分を見下ろすが何も変わったところはない。
「無償で授けてくれるなんて事、滅多にないから感謝するんだね」
「そうなんだ。ありがとうございます」
もう一度ペコリと丁寧に頭を下げた。ただお礼を伝えるだけでは足りない気がして肩掛けバッグに手を突っ込みガサゴソとある物を探す。
「あ、あった!」
紬が取り出したのは緑と黄色の刺繍糸を組み合わせた組紐だった。端も緑と黄色のビーズで留めてある。
その組紐を泉の精霊の長い髭をまとめて結んであげる。
「ほら!似合う!お礼になるかわからないけど…」
泉の精霊を見ると最初は真ん丸の目をして驚いていたが気に入ったのかニコニコ笑顔になった。
「気に入ってもらえたなら良かった。ん?わっ、何々?」
泉の精霊と微笑み合ってるとピクシー達が騒ぎ出した。泉の精霊にあげた組紐を指差し欲しがっているようだ。
「それはお礼にあげた物なの」
そう説明するがピクシー達は紬の回りで飛び回り諦めてくれない。
「そうは言ってもこんなにたくさん無理だよ~。何かあったかな…?」
バッグをまたガサゴソと探ると刺繍糸と色とりどりのビーズが入ったケースが出てきた。
「すごい!私が作った物だけじゃなく手芸用品も出てくるなんて……うん。簡単なので良ければ今作ってあげる!ランスとロッドはこの後、予定ある?時間大丈夫?」
「俺は何もないから大丈夫だぞ。ロッドはさっき魔物退治にどこか消えていったから気にしなくていいぞ」
後ろを振り返るとランスしかいなくロッドは魔物がいないこの場所は退屈だったようで一人魔物退治に行ったようだった。
「ならお言葉に甘えて。作ってほしい人は…」
その場にいたたくさんのピクシーが詰め寄ってくる。ざっと100匹以上はいる。
「多すぎない?あ〜もう、わかったから!みんな作ってあげるから順番に並んで!」
ピクシー達は紬の言う通り並んで列になって自分の番がくるのを待つ。
「好きな色の刺繍糸とビーズを一人1つずつ選んで。それをネックレスにしてあげる」
刺繍糸にビーズを一つ通してズレないように結んでからピクシーに合った長さでネックレスにする。簡単過ぎるが無償で作ってあげるしピクシーの数が多すぎるのでこれで勘弁してほしい。
ピクシー達はそんな簡単な物だったけど自分の好きな色の刺繍糸とビーズが選べて特別感があり、みんな喜んでくれた。
すぐできる物だったが100を超える数だったので気づけば夕方になっていた。
ピクシー達は満足して自分の寝蔵に帰って行ったのか泉の周りは小動物がいるくらいで静かになった。
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