第4話 第二異世界人遭遇

「おーい!」


 身構えた紬の瞳に映ったのは魔物ではなく、人だった。知り合いなのかランスも手を挙げて答えている。


「一足遅かったな。オークは俺が倒しておいたぞ」


 ニヤリと得意げに笑ったランスの前に走って近づいてきたのは、現代では芸能界にいそうな顔の整ったイケメンな男の人だった。


 冒険者の衣装を身に纏ったランスとは違い、紺色のローブを纏っている。金髪に青い瞳でランスより自分に年は近そうだ。身長はランス程ではないがモデル並みに背が高い。ランスの言葉を聞くなり整った顔を少し拗ねさせた。


「えー!オークがいたの!?ここらじゃ、あんまり見ないオーク、僕が倒したかったのに!ちょっとくらい僕の到着待ってなよ!」


「おまえが遅いのが悪い。どうせ森で他の魔物をたくさん狩ってたんだろ?

あ…こいつはロッド。俺の相方で魔導師なんだが、魔物狩りが趣味なんだよ」


 後半のセリフは紬に向かって紹介してくれた。合流してすぐ言葉の掛け合いに2人の仲の良さが見て取れる。


 大きいランスに隠れており紹介されて初めて紬の存在に気付いたロッドは紬を見て驚いた。


「女の子!?ランスに怯えない女の子って珍しくない?」


「うるせえよ。自己紹介しろよ」


 マイペースで失礼なロッドに呆れながらも本当の事なので何も言い返せないランス。

 ロッドはにっこりスマイルを紬に向ける。


「僕はロッドリード・コスタルク。ロッドって呼んでね」


 キラキラと輝くようなイケメンの笑顔に耐性のない紬は、どう答えていいのか固まってしまう。


「紬…です。よろしくお願いします」


 どうにか自己紹介を返したが、キラキラな目を見てられなくて目を逸らし無意識にランスの後ろに隠れてしまう。


 そんな紬を見てロッドは少し目を見開き次の瞬間笑っていた。


「あははっ。僕の顔見てとろけない女の子なんて姉さん以来だよ」


 今のセリフで自分の顔立ちにとてつもなく自信を持っているロッドに余計に引いてしまう紬。


 そんな紬が珍しくて隠れているのをさらに覗きこもうとするロッド。

 近づくロッドの顔を容赦なく押さえてつけて離してくれたのはもちろんランスだ。


 ランスは自分の顔立ちが強面で、小さい子や女の子を怖がらせるということを自覚していた。切れ長の目がいつも怒っているように見え、それに加えて身長が高くガッシリした体付きもそれに輪をかけて怖がられている要因だった。何もしてないのに泣かれる事も何度もあるから近づかないようにしてたくらいだ。

 だが紬は全く怖がる事なく近寄り、あまつに誰もが寄ってくる甘いマスクを持つ仲間のロッドから逃げてランスに寄ってくるではないか。嬉しくて顔が緩みそうになるのを必死に堪えて近づいてくるロッドを引き離してやる。


「おまえが女の子を怖がらせてどうする」


「だって僕を見て逃げる子なんて珍しくて」


「おまえの本性のドス黒いのが滲み出てるのが見えてるんじゃねえの?」


「も~さらに怖がらせるような事言わないでよね!僕、優しいって。ね、ツムギ?」


 名前を呼ばれてハッと我に返る。初対面の人に失礼な態度をとってしまったと反省し、ランスの背中から顔を出し頭を下げる。


「すみません。ロッドのようにカッコいい人に慣れてなく」


 そう謝ってくる紬にロッドは気分を良くしてすぐに立ち直る。


「いいよ。わかってるよ。僕、カッコいいもんね。隠れてしまうのも仕方ないよ」


 いつもの調子に戻ったロッドにランスはまた呆れつつ紬を見下ろす。ロッドにカッコいいと言ったものの、ドン引きしてるのがわかる。ランスの背中から顔を出してるがロッドから見えない所でランスのマントを握り締めている紬がかわいい。さっき会ったばかりなのに妙に惹かれて、自分よりかなり小さい紬を守ってやりたいと思い始めていた。


 でもまぁ、仲間のロッドにも少し慣れてほしくてランスは後ろを振り返り安心させるように紬の頭を撫でた。

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