ロリコンは反則
「一番手はあたしから行くぜ」
くじ箱へ速攻で手を入れ、引いたボールを躊躇いなく上に掲げた。
とても男らしい。
「来た、エース!」
『音選手、引いたアルファベットはR!エース関係ないRです!リピートのRです!リプレイのRです!リフレインのRです!』
「……」
『エースとは真ん中の伸ばす文字しか合ってないRです!リピート、Rです!リプレイ、Rです!リフレイン、Rです!』
「もう辞めろよ!」
引いたボールに目を向けないで言い放ったエースだったので当然当たる確率は二七分の一と確率が低すぎる。
関係ないが千は絶対Sだ。
Aの箱を名残惜しく見た彼女は渋々Rの箱を手に取り居間から出て行った。
5分もしない内に居間へ戻った音の衣装は陸上部の女用のユニフォームであった。
あの、露出のエロい陸上部のユニフォームだった。
中々に大きい胸や、細い脇などがとても目立つ。
「音ちゃんよ、貰った!」
「あ、先輩の野郎!」
スマホでカシャカシャ写メる影太。
サッカーで鍛えた影太の動きはすばしっこく音はスマホを取る事も出来ずそれからも2枚くらい撮られていた。
『音選手って陸上部なんでしょ?あーつまらん。恥じらいがない』
千の音に対する態度が冷たい気がするが、そもそもの性格が知らないので突っ込むのも野暮だろう。
「正直私達も見飽きて目新しさがないよね瑠璃」
「そうですね~」
「妹……」
妹2人もなかなかに冷めていた。
音はとてもいじりがいがあるので多分みんなから愛されているんだろう。
「さて、俺の出番が来たか」
『あ、そういうの要らないんでちゃちゃと済ませてください』
散々音のアナウンスに時間を掛けた割に影太には早く早くとくじ箱を押し付けている。
なんかこの子俺と気が合いそう。
「Cを引いたぜ!」
『うん』
「……それだけ?」
『うん』
ロリコンの影太は千を恋愛対象に見るわけがないが、女に冷たくされたからか少し沈んだ顔で部屋から出て行った。
「なあ千」
「どうかなされましたか?」
司会役としてではなくメイドの平手千として俺に対応してくれた。
「お前ってそんなキャラなの?」
「当然ながら作っておられます。ドMなご主人様からドSなご主人様まで幅広く対応していく。これが私のメイドのあり方です。最近は素の性格というのがわからなくなりつつはありますが、これがわたくしです」
とてもメイドに語られた。
100点満点をあげたかった。
数分後。
正体不明の変態が居間にやって来た。
何を描写しているんだと思うのだが実際にそうなのだから仕方ない。
しかし変態の恰好でもみんなにはとある人物の顔が一斉に思い浮かぶ。
『犯人だー!』と全員が変態に向かって叫ぶと「違うわ!」と影太の声で返事が返ってきた。
変態の正体は影太、元からではないか。
「なにこの衣装?」
『これは黒い人、通称犯人の全身黒タイツ男。早速ネタ枠を引かれてしまったらしいです』
「やっぱりネタかよ!」
見た目は子供、頭脳は大人の物語をはじめとした推理物作品全般に登場する正体不明の犯人の姿が今の影太の姿であった。
これはアニメや漫画だから許されるシルエットで、現実でやるとただの変態だ。
さっきまでのガヤガヤはこの場から無くなっていた。
『では陸上部のユニフォームの音ちゃんと犯人の山田君。ジャッジお願いします』
満場一致で女、音の勝利だった。
あんなにボロクソ言われた音ですら影太に勝ってしまった。
『勝負の決まりはなんでしたでしょうかめぐりちゃん』
「痴女か変態かという事でしょう。ここ以外決められる基準はありませんでした」
『ごもっとも』
「なんであたしのユニフォーム姿を痴女とか言うんだよ」
早速黒星をもらった男チーム。
中堅戦負けたら男チームの負けである。
というか1回戦の惨劇を見てしまった以上中堅戦で終わって欲しい願望。
「星丸ー、負けてー」
「応援して」
負けた男チームは先行になる。
中堅、星丸対千。
『これから千さんが試合なので変わりに私、瑠璃が司会になります』
「因みに瑠璃はどんなのを期待されてますか?」
『そういう事聞くめぐりちゃん?私はお兄さんの執事服が見たいです。恋姉さんはどんなの期待します?』
「カッコイイお兄ちゃん」
『楽しみですね~』
司会は瑠璃になっていたのだがこれは司会なのか?
後俺ではなく星丸の話しろよ。
「俺はG取った」
『はやくお兄さん出ないかな~』
「まともな司会居ないわけね」
Gの箱を手に部屋を出た星丸。
着替えて出てきた姿は気持ち悪い黄色い着ぐるみ姿であった。
「平手さん、なんですかこの着ぐるみ?」
「着ぐるみって普通喋らなくない?」
「……」
多分星丸は着ぐるみの中で相当凹んでいるオーラを感じてしまった。
あいつは案外豆腐メンタルだったりする。
星丸の気持ち悪い着ぐるみの説明。
なんとかマウスみたいな大きい耳があるのだが何故か耳含め全身黄色であり、頬に赤い丸。
指4本の手袋、ギザギザした尻尾。
世界的の人気ネズミのキャラクターを混ぜたような感じである。
しかし著作権的な問題なのかオリジナルの部分もある。
背中に大きな『雷』の文字。
額に刻まれた一本傷。
尻尾に付けられた東京スカイツリーのストラップ――ピアス的なノリのアクセサリーだろうか?
合成獣とでも表現すればいいのだろうか?
「これはうちの会社で即ボツになったマスコットキャラでキャッチコピーは『キモ怖い』、名前はピカマウスだがそんな名前だったかな?まさかネタ枠が2つも出揃うとは」
やっぱりネタだった。
色々アウトなものでもう星丸には触れないでおこう。
『恋姉さん、感想をお願いします』
「これの恋人キャラの設定ってあるんですか千ちゃん?」
「無いよ~」
「う~、見たかったな……」
恋も恋で星丸同様凹んでいた。
恋には悪いが全く共感出来なかった。
光と犯人姿の影太はワイワイと星丸を写メに残していた。
『次は我らのメイド、地味アンド地味の平手千さんです』
「地味に生まれてきて申し訳ありません」
自称地味のキャラがスライムのように全く掴めないの様な少女、平手千の出番になった。
「なぁ光、ところで千って本当に地味なの?」
「千ちゃんは地味可愛いけど今はメイド服着てるから地味さがないんだね。ブレザーだと地味可愛いよ」
「お前の説明ってなんかふんわりしてるよな」
伝わるようで伝わらない。
素敵な説明を光に授けられた。
「私は地味です。アルファベットの中でも使う機会がほとんどなく、1番忘れられやすい存在。そんなアルファベットを引いてしまった。まるで私です。ふふ、どうせ私はいつの間にか忘れられていく人間なんですよ」
「千ちゃん何をそんなに卑屈になってんのよ」
友達であり、チームメイトの光がフォローに出ていた。
「だって見てくださいよQですよ。はは、地味な私によくお似合い……はぁ」
「探偵学園じゃない!ほ、ほら犯人もすぐそこに居るし」
「え、俺?」
光の指と、光と千の視線の先の犯人姿の影太。
急に話に混ぜられ挙動不審の影太。
「あんたのせいで、あんたがロリコン趣味という反則なインパクトがあるから私が地味扱いされるのよ!」
「知るかよ」
千が地味な理由を押し付けられた影太であった。
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