GAME START
「恋と千ってプライベートな付き合いもあるの?」
「むしろ今日みたいに仕事で会う方が少ないですよ。巫女様には『千年の恋コンビ』と呼ばれるくらいの仲です」
スケールの大きいコンビ名であった。
この後千が「恋ちゃんを抱き枕にすると気持ち良いんですよ~」という発言をし、男子3人の視線が向いたのは言うまでもない。
「平手先輩、そろそろあたしらが戦う対決方法を教えてくれよ」
うずうずしていたのかはわからないが音が目を輝かせて燃えていた。
瑠璃とめぐりはそんな姉の姿にやれやれといった表情をしていた。
「フフフ、わかりましたよ音ちゃん。因みにあなたは何で対決をしたいと望みますか?」
「無難に陸上といったところかな。あたし陸上部のエース張ってたからな」
「あ、そう」
「あれ?聞いただけ?」
音の陸上の話は結局雑談だったらしく千に軽く流されてしまった。
千はどこから取り出したのかバラエティ番組で見かけそうな四角いいかにもくじでも引いてくださいみたいな箱を用意していた。
「この中には27個のカラーボールが入っています。さて、何をするつもりだと思いますか山田君?」
「……ビンゴ?」
「いいよ1人でビンゴやってて」
「え?」
結構面白い子である。
微笑みながら説明が続いていく。
「少し話は逸れて家の前に停まっているトラックには実は仮装衣装が入っていました。その衣装は今ここにアルファベットが書かれた大きい箱(くじ箱とは別)の中に納まっております」
A~Zと印刷された大きい箱が並べられた。
この中に衣装が入っているらしい。
「こちらのボールにもアルファベットが印刷されており、それがくじ箱に入っているのでそれを引きます。例えば引いたボールがJならJの箱に入った衣装に着替えるというゲームですね」
簡単でわかりやすいゲームだ。
しかしこれがどう対決になるのだろうか?
一部矛盾しているのかただの誤りなのかの疑問点もある。
「千ちゃん、それって対決にならなくない?」
「いえいえ慌てるのは早いですよ光さん。それをどちらが似合っているかや可愛いか、ぶっちゃけどっちが好きか審判が決める勝負になります」
「誰がそのジャッジをするの?」
「対決に参加しない恋ちゃん、瑠璃ちゃん、めぐりちゃんがこの審判になります。折角ですので全員が参加出来るゲームを考えました」
観客すら対決に混ぜて楽しませる。
なかなか千も行き届いた配慮をする人だ。
その後千は観客3人に青い字で男、赤い字で女と印刷されたプラカードを配っていた。
審判3人だと奇数、偶数に分ける事が出来るので公平である。
どんだけ用意周到なんだ。
その事について平手氏から一言「メイドですから」。
答えになっていない。
「これを先鋒戦、中堅戦、大将戦としていきましょう。勝ち抜き戦では時間が掛かるので2本先取したチームの勝利です」
「ファッションショーみたいな感じ?」
「そうですね。色々なものを用意されておりますので」
開始をしようとしたのだが、まだ訊いていない事があり千に質問をした。
「このくじって男女同じものを使うの?」
「イエスです。つまり男子が女物、女子が男物を引いてしまう可能性もあるので気を付けてください」
一気にこのゲームの危険度が増した。
「それぞれの配分は?」
「男物、女物のアルファベットの規則はなく完全にランダム。例を挙げるなら奇数番のアルファベットが男、偶数番が女などの法則は全くありません。
男物12着、女物12着、ネタ物3着の計27着の配分でございます。
衣装はコスプレものが多いですが普通にスーツなどの面白みのない衣装もあるので盛り下がるので引かないでね」
中々に酷い言い分である。
「千、アルファベットって26しかない筈だが?」
「え、マジで?」
ここで俺は先程に気付いた矛盾を指摘した。
後アルファベットの数がわからなく驚いたのは千ではなく星丸である。
「あざとい指摘ですね達裄さん」
「その説明もなく始めようとした千も相当だけどな」
「あらあら」
くすくすと笑う千の回答は「確率は低いですが引いた後のお楽しみです」との事。
当然ながら並べられているのはアルファベットのだけで、27個目は居間に置いていない。
ぶっちゃけ誰かが引いてしまう予感はある。
これがネタ枠なのは訊くまでもないだろう。
これからは質問もなく誰がどの順番でいくかの打ち合わせになった。
先行……女チーム、先鋒音、中堅千、大将光。
後攻……男チーム、先鋒影太、中堅星丸、大将達裄。
この組み合わせという事になった。
先行、後攻とはどちらが先にボールを引くかである。
2回戦以降は負けたチームが先行になる。
着替える際は衣装の入った箱を未開封のまま居間から出て別の部屋で着替えるとの事。
「司会を務めるのは高校生メイド、平手千でお送りします!」
ノリノリの選手兼司会のメイド。
「GAME START」
始まりが告げられる。
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