第81話〜特典ボーナス
ズキン…
僅かな痛みと共に、ほんの少し前のはずの記憶を思い出す。
そして目の前に、半透明なボードが現れた。
ーーーーーーーーーー。
1、報酬を選ぶ。
2、アイテムを選ぶ。
3、取得するボーナスを選ぶ。
4、取得するスキルを選ぶ。
5、特典ボーナスを選ぶ。
ーーーーーーーーーー。
俺が悩みに悩んだ結果、時間をかけ過ぎて一度死ぬ事になったあのチュートリアルのクリア報酬。
すでに1〜4の文字は灰色となり、選ぶ事は出来ない。
あの時手に入れた特典ボーナスだが、実はまだ使用していない。
正確には、選び終え、選択する直前にあの不気味な男に殺された。
異変に気付かなければ特典ボーナスを選び終え、それを奪われていたかもしれない。
……あれ?なんでそんな大事な事を忘れていた?
それに異変、て、なんの…?
赤い水溜りだけが鮮明に浮かび上がる。
それを今唐突に思い出して…
いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
これは今ある最善の選択を取るために必要な選択だ。
心を動かすな。
…………。
俺が選んだ特典ボーナス、それは【女神の祝福】。
効果はステータスに載っている項目をどれでも2段階、もしくは倍の数値にすることができるというもの。
破格も破格、さすがは自称この世界の管理者がチュートリアル上位突破者にのみ与える特典ボーナスだ。
強力過ぎて、何度も裏を疑ったものだ。
職業を始めスキルだろうが能力値だろうが、そのままレベルだって倍にする事ができる。
レベルで表記されてなくともその項目のランクすら二つも進化させる事が出来るのは破格だ。
職業は上がれば上がるだけデメリットが無くなっていくか、変化するらしいからな。
しかし最初から使ってしまったのではそこまでの効果は見込めない。
レベル一桁が倍になったところでたかが知れている。
レベルが1から2になろうが、2が4になろうがそれは無駄遣いと言うもの。
10が20になるのでも勿体ない。
単純な考えだが、限界まで鍛え上げてから使えばこの世界最強の存在の倍の強さになるのだ。
もっともレベルの完ストがあるのかは分からないが…。
…………。
初期の職業で使うのと、いわゆる上位職で使うのも同じだな。
職業にもランクがあり、下位職、上位職とあり、さらに上の特別な職業もあるのだとか。
職業について教えてくれた冒険者は下位職の【剣士】だったが、自身の実力を高めていけばいずれ上位職の【剣豪】になれるとも言っていた。
なので俺も職業を【剣士】にして【特典ボーナス】を使えば【剣豪】を超えてさらに上の職業にまでなることができる。
【剣豪】まで鍛えてから使えばさらにとてつもなく強力な職業になることができるのだ。
とはいえ、奴が持っていた【盗神の加護】のように特殊な、それこそ唯一と言われるような特殊な能力も魅力的だった。
あくまで【女神の祝福】は、持っている能力を二段階上げることができるだけ、とも言えるからな。
限界値がないと仮定すれば、時間をかけて、死に物狂いで鍛えれば同じ結果を得る事も可能だからだ。
…………。
とはいえ、破格な効果であることに変わりはない。
何が起こるか分からないこの状態で、切り札を進化させることが出来るのだから。
「…………。」
【女神の祝福】を【職業自由選択】に使用する!
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