第79話〜下層への階段
…………。
長い階段を降りて行く。
多くのダンジョンの共通認識として、階層を跨ぐ階段にはモンスターは生まれないらしい。
ダンジョン内にも縄張りがあるのか、それとも一定のルールがあるのか。
余程の事がなければモンスターは階段を登って追いかけて来ない。
それでも一応罠はないか確認しておく。
「そもそもモンスターが¨生まれる¨って言うのが不思議なんだよな。卵や母体からではなく、突然モンスターが沸くなんて、どういう理屈で成り立ってるんだか」
そんな疑問を呟けば、耳のいいヒナが律儀に教えてくれた。
「ダンジョン内で起こる現象を外と一緒にするだけ無駄。倒しても時間が経てばいつの間にかモンスターがいる。冒険者の中には黒いモヤみたいなのが空中に滲み出たと思ったらモンスターの形になったなんて言う人がいるし、実際それを見た事のある冒険者も大勢いる。だからモンスターの沸かない¨安全地帯¨の情報は貴重」
ダンジョンの外にいるモンスターと違って、ダンジョン内でモンスターを倒してもしばらくすると死体は溶けるように消えてしまうと言う。
その際、体の一部、爪や牙などを残すので、それらはポップアイテムと呼ばれるのだとか。
まるでゲームだ。
しかし長期間放置されたダンジョンのモンスターや、長らく倒されなかった強いモンスターは死ぬと死体を残す事が多いらしい。
どういう法則で成り立っているのだろうか。
「階段が終わる。一歩でもその階層に踏み出したらモンスターに知覚されるようになるから注意」
「了解。一歩でもってことは、階段の1段目に立ってれば見えていても問題ないんだよね?」
「そう。けど攻撃しようとしたりしたらバレる」
「ふーん。じゃあ見える範囲で情報収集しようか」
階段の1段目に二人で並んで立つ。
どうやらこの階段はちょうど角にあるらしい。
下りて正面に続く通路と、左に続く通路ある。
どちらもしばらく真っ直ぐ続いていて、途中に別れ道がある。
ここの通路も先程の階層同様の外観で、等間隔に発光する石がある。
天井の高さもあるし、幅も5人くらいなら広がって歩けるから、大きめのモンスターもいる可能性がある。
「……近くに一体。左の通路の先。二足歩行…?片脚を引きずってる。臭いからして、アンデット」
ヒナの獣人としての五感は暗殺者の職業補正もあってとんでもないな。
「……見えた。大きさは成人男性くらい。腐敗した体にいくつも人の顔が浮かびあがってる。左脚を引きずってる。不自然に長い爪、いや尖った指?腕も4本ある」
「ヒナも見えた。その特徴だと、クロウラット」
苦労ネズミ?
いや、クロウは爪か。
ラットはなんだったか。
こういう時、言語理解の変換に痒い所に届かない不便さがあるな。
さて、ここはまだ安全地帯。
どうするか…
…………。
1、まずは様子見。やり過ごそう。
2、攻撃のチャンス。先制攻撃をくわえる。
3、今ならヒナの尻尾撫でれるんじゃない?
4、ヒナの頭を撫でる。好感度アップ⤴︎⤴︎
…………。
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