第65話〜いざ、ダンジョンへ
…………。
指示を終え、俺の前に立ったダフネは少しだけ迷うようなそぶりを見せた。
「あなたはあくまでこの場所の確認のために連れてこられたにすぎないわ。冒険者でもない。だからこのまま街へ戻っても何の問題もない」
ダフネの年齢は分からないが、ぱっと見で二十代前半から半ばくらい。
この世界では今の俺と同じか少し小さいくらいの子供がいてもおかしくない年齢だ。
「このまま街へ戻る?それなら伝令役の兵士の皆さんと一緒に安全に戻れるわ」
だからこそ俺みたいな子供には甘いのかもしれない。
先ほどまでのリーダー然とした毅然とした姿はなく、子供を心配する一人のお姉さんがそこにいた。
これが同じ冒険者であれば心配もしなかった、もしくは表には出さなかっただろう。
けれど今の俺は一般人、というくくりに入る。
それも8歳やそこらの身よりも何もない子供。
「それとも一緒にくる?あなたの実力はメイたちにも聞いて知ってるわ。正直今は猫の手も借りたい状況だし、この件は領主様にも伝令が向かってる。報酬も出るわ」
おそらくダフネは全力で俺を守ってくれるだろう。
もしかしたらそのまま宵薔薇で保護してくれるかもしれない。
今街に戻ったところで身分証明もできず、また面倒な手続きもあるだろう。
さて、どうしようかな?
正直ここまで来たら一緒に街に戻るのも、行動するのもメリット、は…
…………。
1、僕もお手伝いします!
2、街に戻ります…。
3、僕を【宵薔薇の乙女】に入れてください!
4、結婚しましょう。
…………。
うーん。
僕はダンジョンに行きたいんだよね。
街に戻るなんて論外!
そもそもちゃんとした身分も保証人も何もなしに戻ったところで手間だよ。
それならこっちで結果を残しておくに限るね。
さすがに宵薔薇に入るのはデメリットが大きいかな?
少なくともスキルとか【職業自由選択】とかをきちんと使いこなして、鍛え上げないと。
なんとなくダフネさんの目線に熱っぽいものがある気がする。
もしかしてこの人、ショタ属性とか?
あはは。
うん、久しぶりのダンジョンでちょっとテンション上がってるかも。
さてさて。
くだらない選択肢も、物語を進める上では重要な分岐。
どうしようかな?
…………。
「僕が一緒で、ご迷惑じゃないですか……?」
「え……そ、そんなことないわ!」
身長差があるから自然と上目遣いになるのは仕方ない。
僕は子供だし、どうしたらいいか分からなければ不安になって声が少し震えて細くなるのも仕方ない。
その仕草が母性本能をくすぐるって言われても、実際子供なんだからしょうがないよね?
僕は頰を赤く染めたダフネさんの間合い、人との距離感に半歩だけ踏み込む。
「ほんと、ですか?」
半端に握ったこぶしを胸の前にもってきて、首をかしげると、ダフネさんからきゅんと音がした気がした。
はい、ダンジョン行き決定!
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