第56話〜初めて?の街
…………。
何度か道に迷いそうになりながらも、街に着くことができた。
道中に遭遇したモンスターを倒したおかげでレベルが上がり、体力も底上げされたのがよかった。
スキル【不死者】のデメリットで半減した項目は階位を上げる以外の手段でも戻せそうで安心した。
左手の義手の扱いにも慣れて、今ではダンジョンにいた時よりも強くなったのを実感する。
時折違和感のようなものを感じるが、これは左手に限った話ではないか。
…………。
さて、街にたどり着けたのはいいけど、どうやって中に入ろう?
身分証なんてないし、お金は……一応あるか。
子供だけでも中に入れるだろうか?
子供の一人旅はこの世界でも珍しいだろうし…。
…………。
1、記憶喪失だと言う。
2、来た道を引き返す。
3、門以外から進入する。
4、街に入る商人の荷物に紛れる。
………。
うーん。
とりあえず引き返すのは却下だ。
道なりにいけば別の街なりに着くだろうが、この街にたどり着くまでにも結構な日数が経過している。
それに別の街なり何なりに着いたところで同じ問題に直面するだけだ。
水や肉は道中鳥や獣を狩ったり川を見つけたのでどうにかなったが、塩や必要な栄養が足りない。
記憶はないが、素人が生半可な気持ちで数日以上の道のりを旅ができるほど現実は甘くないってことは分かる。
それに夜中にモンスターに襲われたらまだ対処しきれない。
ここまでは毎晩木の上で過ごしたが、ほとんど眠れなかったし。
しかし門以外からの進入や荷物に紛れての密入国(街?)は見つかった時のリスクが大き過ぎる。
そこそこ大きな街だし、荷物のチェックは厳しそうだ。
街を囲む塀の壁の高さも4メートルはある。
頑張れば越えられそうだが、見張りのための物見が等間隔にあるのが見える。
壁の周りに都合よく木なんか生えていない。
ここは一番デメリットがない1でいくしかないか。
…………。
「よし……次、ってお前さん1人か?」
「はい」
鎧を着て剣を腰にはいたおじさんが話しかけてきた。
フルフェイスの兜じゃないので表情がよく分かる。
人の良さそうなおじさんだ。
普通門番ならもっと強面にするんじゃないかと思ったが、まぁ顔で職業が決まるわけでもないか。
「身分証はあるか?」
「ないです」
「ない?どこかの村出身か?この近くだとイーガかドラマの村だが、そこだと手形があるしな」
人の良さそうなおじさんの顔が困った感じになった。
まぁ身分証もない子供1人じゃ対応にも困るよな。
「えっと、分からないんです」
「分からないって、どこの村から来たかが分からんのか?名前もないような村、この近くにはないはずだが…」
「いえ、あの僕ここ数日より前の記憶がなくて…」
「記憶がない?そりゃなんでまた。……いや、待てよ?お前さんどの道から来た?」
「えっと、右の道からですけど……」
「右の……それに数日前か。よし、詳しい話を聞こう。ちょっと待合室まで来なさい。……おーい、こっち代わってくれ!」
「え、ちょ」
なぜか納得顔の人の良さそうなおじさんに連れられて待合室に行くことになった。
Why?
代わりの人が出て来て門番を交代する。
そして俺は待合室へGO。
…………。
後になって、記憶喪失って言わずに普通に田舎から出て来たとか言って街に入ればよかったと思った。
身分証がなくても代行証を高めのお金を預けて出してもらえたことを知ったが、まさに後の祭りだった。
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