第53話〜見なかったことにする
…………。
男は外見からして四十代ほど。
服装は旅装に近いが執事服などにも似た形状。
持ち物は特になし。
致命傷はナイフで心臓を背後から一突き。
その前に喉を切り裂かれているみたいだ。
これだと悲鳴も上げられなかっただろう。
まるで声を出させないようにするためだけに、声帯を切り裂いたようにもみえた。
……そんなわけないか。
…………。
死体のそばには輪っかのようなものも落ちていたが、これは死因には関係ないと思われる。
ナイフについては俺が身に付けていたものと同じ種類で、ベルトの空きが一つあることからこのナイフは俺のものの可能性が高い。
そしてよくよく観察してみれば着ている服には返り血らしきものが数滴。
そして俺には直前までの記憶はない。
「…………。」
よし、見なかったことにしよう!
用途は分からないが、輪っかは拾ってお…
いや、手に持った瞬間に嫌な感覚がしたのでやめておこう。
他に使えそうなものはもらっておこう。
気は咎めるが、異世界で生き残るためには仕方ないと割り切ろう。
…………。
何も見なかった俺はとりあえず足元に残された足跡を辿ることにする。
そうすれば少なくとも森から出るか、人のいそうな場所に出るだろう。
とりあえず¨落ちていた¨ナイフも貰っておこう。
それにしても、鮮やかな殺傷痕だった。
心臓なんて主要な臓器、肋骨やら背骨やら邪魔になるものがいくらでもある。
それらの隙間を最短で貫いて、最小の動きで心臓を破壊していた。
もしあれをやったの犯人が近くにいれば、抵抗できずにやられてしまうかもしれないな。
あれだけの腕前があればわざわざ喉を的確に切り裂く必要もなかったのではなかろうか。
あれだと声だけを上げさせないようにするためだけに攻撃したように見えたが…。
おっと、俺は何も見ていない。
…………。
森を移動していて違和感がある。
身体が重い、というか体力が落ちた?
イメージと体の動きが一致しない。
それに何か、無くなった左手の感覚に似たものが…。
¨目が疼く¨?
何故そうしたのか自分でも分からない。
気がつけば俺は自分自身のことを¨視て¨いた。
ーーーーーーーーーー。
種族:人族(♂8歳)
名前:ナナシ
階位:18
職業:冥界師
状態:欠損(左手)
腕力:D 体力:F
魔力:E 知力:C
敏捷:C 器用:E
運勢:D
称号
・転生者・迷宮探索者・◾️◾️◾️◾️
固有スキル
・言語理解・職業自由選択・進化の瞳・◾️◾️◾️◾️
ユニークスキル
・迷宮適性Lv:2・分割思考Lv:2・不死者Lv:4
スキル
・観察眼Lv:Max・短剣術Lv:3(6)・追跡Lv:4・不屈Lv:8・隠密Lv:8・危機察知Lv:7・苦痛耐性Lv:6・悪食Lv:5・逃走Lv:5・視線感知Lv:3・◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️
ーーーーーーーーーー。
「なんだ、これ……?」
自分のステータスを¨視る¨ことができていた。
いや、それにも驚いたが、ステータスが、スキルが増えて、さらに熟練度も上がっている。
一体何が起こったんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます