第52話〜目覚めてすぐに事件に巻き込まれた?
…………。
だいぶ森の奥まできた。
一応追っ手が来ることを期待していたけど、ついに姿を見せることはなかった。
今はそれでいい。
どうせここは森の中。
僕を殺してくれる要因なんていくらでもある。
飢え死にでも構わない。
ようは首輪さえ外れればいいのだから。
けどモンスターに食われてしまえば最悪生き返らずにそのままということもありえる。
さすがにバラバラになったら無理だろうし。
どの程度なら生き返れるのかの見極めは難しいな…。
もし身体の中心から真っ二つにされたらどうなるんだろう?
さすがに2人に増えることはないと思うけれど…。
仕方がない。
¨僕が僕であるうちに¨、出来ることをしておこうかな。
僕に首輪を通して命令できる人は全員死んだ。
いや、1人だけ残ってるか。
あの場で死ななかった人が。
…………。
…………。
あれ?
「……ここ、どこだ?」
気がつくとそこは森の中だった。
周囲を見渡しても草木以外の何もない。
俺は上を見上げた。
そこには木々に遮られてはいるが、青空があった。
「どういう、ことだ……?」
先ほどまで俺は、ダンジョンにいたはずだ。
それがなぜ森の中にいる?
ズキン!
「っ⁉︎」
左手に鋭い痛みが走った。
見ても外傷はない。
いや、何か違和感がある。
うまく動かせない?
いや、なんで左手があるんだ?
見覚えのない手袋を外す。
喰いちぎられて無くなったはずの左手が、マネキンのような義手になっていた。
…………。
クールになれ。
まずは落ち着いて情報を整理しよう。
俺はさっきまで迷宮にいた。
プチデビルに左手を食いちぎられたのは、覚えている。
その後は延々とモンスターを倒して、迷宮を脱出しようとしていたはずだ。
途中から意識が朦朧としていたのは覚えているが…。
「……ダメだ、思い出せない」
まるで夢が時間の経過と共に思い出せなくなるように、あったはずの記憶が思い出せない。
全くないわけではなく、何かをしていた、ということは覚えてるのに、肝心の何かが思い出せない。
…………。
とりあえず自分の現状を理解しよう。
まず装備、というか装いは随分と変わっていた。
バックパックも剣もあの特典カバンすらない。
服装すら違う。
動きやすさを重視したシンプルな服に、使っていたものとは違うナイフ数本にベルト。
何故か下着がカボチャパンツ?だったのは置いておこう。
あとはある程度のお金の入った皮袋だけ。
あと……
「この死体は誰なんだろう?」
俺のすぐそばでナイフで刺されて事切れている従者っぽい装いの男の人。
よく見れば刺さっているナイフは俺が持っているナイフと同じ種類だ。
これは、何かの事件に巻き込まれたのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます