第31話〜忍び寄る狂気
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悩みに悩んだ末、【職業自由選択】を選んだ。
最後の方ではベルは宙に浮くのをやめ、眠り、起きてまだ決まっていないことに諦めの表情だった。
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4、取得するスキルを選ぶ。
5、特典ボーナスを選ぶ。
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まだスキルと特典ボーナスが残っている。
長い戦いになりそうだ。
だが、最後まで諦めるわけなはいかない。
さあ、今こそ選択の時だ!
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後から思えば、疲れていたのだと思う。
目覚めて見知らぬ場所(ダンジョン)にいて、まったく自分の実力の通じないモンスターと遭遇し、自らの過去もこれからの未来も分からぬまま。
だから無駄に時間をかけてしまった。
慎重さと優柔不断は違う。
クールになるべきだった。
落ち着いて情報収集すべきだった。
この時最も最善の選択は、時間を無駄にせず、速やかに行動に移すことだった。
そうすれば、あの厄災のような存在に見つかることはなかったはずなのだから。
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ようやくクリア特典を選び終えることができた。
悩みに悩んだ末導き出した答え。
例え後で悔いようとも、後悔先に立たず。
……いけない、少し疲れている。
そういえば目覚めてからまだ一度も食事をしていないし、睡眠も取っていない。
クリア特典は選んだし、そろそろ休もう…。
「ふぅ。ベル、終わったよ」
凝り固まった身体を伸ばしてほぐしながら振り返る。
ベルは途中からずっと暇そうにしていた。
さすがに何時間も、下手したら1日以上放置していたのは申し訳ない。
「そういえばベルは食事って…」
この時、なぜ気付かなかったのか。
決して広くはないはずの部屋で。
ほんの水たまり程度の量とはいえ。
血の匂いが薄く広く充満していたことに。
振り向いた先、暇そうに座っているはずのベルの姿があるはずのそこに。
赤い水たまりに首の取れた人形の残骸が浸っていた。
それはとてもよくできた人形だった。
首が取れていても、それが精巧に作られているのがよく分かる。
まるで生きているようだ。
赤く汚れているのがとても惜しい。
それにその表情。
まるで驚愕に目を見開いたその瞬間を切り取ったようなその顔。
それがあまりにもリアルで、生々しくて。
驚いた顔をしたベルにそっくりだった。
「あはは、はは。やっと、選び終わったの、かな?待ちくたびれた、よ」
気が付けば密室のはずの部屋には、1人の狂気(おとこ)がいた。
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