第5話〜影を照らせ
ドンッ!
扉に衝撃が入ったタイミングで、後ろを向いて走り出した。
ドンッ‼︎
後ろから扉が蹴破られる音が響き渡った。
…。
左前方に扉。
1、開ける。
2、通り過ぎる。
悠長に考えている暇はない!
もちろん通り過ぎる。
あの扉は鍵が掛かっている。
背後に濃密な気配を感じながら走る。
…。
通路はそんなに長くない。
すぐに分岐にたどり着く。
1、左に曲がって二階に駆け上がる。
2、このまま直進する。
3、最初の部屋に逃げ込む。
扉は部屋の中から見て外側に右開きだ。
悩んでいる時間はない。
曲がり道と最初の部屋は通り過ぎてこのまま直進する。
背中を何かが掠めた。
あのままだと曲がるならともかく、部屋に入るために扉を開けていたら攻撃が直撃していたかもしれない。
後ろの影は攻撃したことで少しだけ速度が落ちたらしい。
しかしすぐに追いつかれてしまうだろう。
左前方の扉に飛びつく。
ドアノブを捻り、手加減なしに開いた。
バンッ!
手前に開かれた扉と入れ違いに部屋に入ると、後ろで衝突音がして勢いよく扉が閉まった。
急いでドアノブを掴む。
ドンドンドンッ!
扉が何度も叩かれる。
ガチャガチャガチャ!
ドアノブが何度も回される。
しかし勢いが付かなければ扉が開かれることはない。
ドンッ!
今度は体当たりを始めた。
しかし外開きを内側から押すならともかく、外側から押したところで金具部分以外で威力を分散してくれるので先ほどのようにはいかない。
僅かにだが時間が稼げた。
ドアノブを片手で掴んだまま、背負っていたリュックを下ろす。
どうすればいい?
1、リュックそのものを武器にする。
2、ナイフを使う。
3、ライトを使う。
リュックの中身はそこまで重くない。
靴下の中に小石を詰めて作るブラックジャックのような攻撃力も期待できない。
ポケットに入れてあるナイフを使うか?
ふとメモ帳に書かれたことを思い出した。
『黒い影』
『光に弱い』
一か八かだ。
ライトを使おう。
ガチャ!
リュックを開けるのに意識が向いたことで握力が緩んでしまったらしい。
外側から扉が開けられる。
勢いよく扉が開き、外から黒い影のようなものが入り込んできた。
「!」
ええい!
ライトのスイッチを入れて影のようなものに向けた。
そこそこ薄暗い部屋を光が照らす。
ーーーァアァアアア⁉︎⁉︎
掠れた悲鳴が上がり、何か小さな硬いものが落ちる音がした。
手巻き式のライトはすぐに光が弱くなって消えてしまう。
光に眩んだ目を開いてみると目の前には何もなく、先ほどまでの脅威は嘘のように消えてしまっていた。
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